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 茨城県つくば市東平塚の住宅で、高齢夫婦が遺体で見つかった殺人事件から1月1日で1年になる。県警は12月、犯行時間帯や犯人の逃走経路についての捜査状況を発表したが、有力な手がかりは乏しく、捜査は難航している。遺族は悲しみと怒りを抱えながら、早期解決を願っている。(笹山大志、松岡大将)

 事件から1年を前に、県警は25日、犯行時間帯を12月30日午後7時半から約12時間の間とみていることや、犯人の逃走経路を絞り込んだことなど、捜査状況を発表した。

 捜査本部が置かれるつくば中央署の谷津成久署長の説明によると、小林孝一さんと揚子さんは12月30日午後7時半ごろ、近所のスーパーから帰宅。翌31日午前7時ごろに揚子さんの友人が小林さん宅を訪れた際は応答がなかったという。捜査本部は、この約12時間に2人が殺害されたとみている。

 また、2階ベランダの手すりには血痕が付着していたといい、犯人が2人を殺害後、ベランダの柵を乗り越えて逃走した可能性が高いという。

 捜査関係者によると、事件発生当初、現場が荒らされた形跡がないことや、遺体に繰り返し殴打された痕があることなどから、夫婦を知る人物による、恨みなどが動機の犯行という見方が強かった。その後の捜査では、夫婦の交友関係の中で殺人につながるようなトラブルは見つかっていないという。

県警、情報求める

 県警は延べ約8千人の捜査員を投入。これまでに事件について24件(24日時点)の情報提供があったが、いずれも有力な手がかりにはなっていないという。

 谷津署長は「(事件当日の前後で)現場を通ったなど、ささいなことでもいいので知らせてほしい」と呼びかけている。情報提供はフリーダイヤル(0120・144・559)へ。

長男、犯行に怒り

 孝一さんの長男の照幸さん(47)が今月上旬、朝日新聞の取材に応じ、犯人に対する怒りや周囲から「犯人視」されたことへ憤りを吐露した。

 照幸さんが事件を知ったのは1月1日。自宅で1人で日本酒を飲んでいた時、訪れた警察官から聞かされた。2日後、署で父の遺体と対面すると、鼻がつぶれ、目の横が切れていた。「犯人を殺してやりたい。悔しい」と怒りと悲しみでいっぱいになった。

 照幸さんにとって「父は何でも1人でできる職人」で、あこがれの存在だった。溶接や電気工事、内装までを1人でこなし、事件現場となった自宅も孝一さん自らが建てたという。

 一方、照幸さんにとって義母となる揚子さんとは、そりが合わなかった。孝一さんの所有物を揚子さんが売ろうとしたことなどがあり、口論になることがしばしばあった。

 事件後、揚子さんとの不仲を知る友人らから「犯人視」されたという。コンビニで会った知人には「(犯人は)お前じゃなかったの?」と言われた。捜査員からは携帯電話のデータを消さないよう言われたり、連日、事件前後の行動について聞かれたりした。

 照幸さんは「トラブルがあったことは事実だから仕方ない」と割り切るが、「本音では、俺じゃないぞと早く疑いを晴らしたい」。事件から時間が経つにつれ、「迷宮入り」するんじゃないか、との思いが強まり、事件が風化しないよう、避けていた取材を受けることを決めた。「どんな情報でもいいので警察に連絡してほしい」と話す。

     

 〈つくば高齢夫婦殺害事件〉 1月1日午後4時35分ごろ、つくば市東平塚の建築業小林孝一さん(当時77)と妻の揚子さん(同67)の遺体が、自宅2階で見つかった。孝一さんは後頭部に数カ所、揚子さんは頭部から顔面にかけて十数カ所、平らな鈍器のようなもので殴られた痕があった。死因は失血死だった。