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医の手帳・認知症の初期症状(3)

 嗅覚(きゅうかく)は、においや香りを感知する感覚です。嗅覚と記憶には深い関係があります。特定のにおいが関連する記憶を呼び覚ます現象を、プルースト効果と呼びます。私の場合、キンモクセイの香りがすると、むかし通っていた小学校の校庭の記憶がよみがえります。

 においの情報は、鼻から脳の嗅球と呼ばれる場所に運ばれ、その後、嗅内皮質などに伝達されます。嗅内皮質は、記憶と関連する海馬と神経線維で結ばれています。アルツハイマー型認知症の病理病変は、嗅内皮質に最も早期に出現します。

 においがわかりにくくなる嗅覚低下が生じる原因は様々ですが、最近、認知症と嗅覚低下の両者に深い関係があることがわかってきました。腐ったものを食べてしまった、ガス漏れや鍋をこがしたことに気がつかない、漂白剤を誤飲したなどは、認知症の方で実際にあった嗅覚低下に関連した症状です。嗅覚低下は、本人が気づかないことも少なくありません。

 アルツハイマー型認知症の方では、高い頻度で嗅覚低下を認めます。嗅覚には、何のにおいかを嗅ぎ分ける識別能と、においに気づく検知能があります。アルツハイマー型認知症では識別能が最初に障害されます。レビー小体型認知症では、嗅覚低下の頻度がアルツハイマー型認知症よりも高く、概して早期から高度な嗅覚低下がみられます。嗅覚低下は、特徴的症状としてレビー小体型認知症の新しい診断基準(2017年改定)に新たに組み入れられました。

 嗅覚障害はMCI(軽度認知障害)の段階から認められ、認知症の初期症状となることがあります。MCIで嗅覚低下がある場合、認知症に将来移行する確率が2倍以上高くなります。普段意識することが少ない嗅覚ですが、嗅覚低下は認知症の早期兆候となる可能性がありますので、耳鼻咽喉(いんこう)科などの医療機関に相談されてはいかがでしょうか。

<アピタル:医の手帳>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/techou/(新潟大学脳研究所生命科学リソース研究センター 池内健教授)