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 東名高速で「あおり運転」を受けた末、一家が死傷した今回の事故は家族旅行の帰り道、10代の娘2人を残して両親が亡くなった悲惨さに加え、あおり運転を繰り返した石橋和歩被告の行為の悪質さが社会的関心を呼んだ。横浜地検が起訴にあたって、逮捕容疑の過失運転致死傷ではなく、法定刑がより重い危険運転致死傷罪を適用したのも、世論を意識した判断だった。

 一方、同罪は処罰対象を特に悪質な行為に限っている。導入時には国会で、「対象が不当に拡大されることのないよう努める」という付帯決議もついた。運転という身近な活動が対象のため、拡大解釈が許されれば、市民生活を萎縮させる恐れがあるからだ。

 横浜地裁の判決からは、事故の重大さと、法の趣旨のはざまで苦慮したことがうかがえる。「重大な危険を生じさせる速度で車を運転する」との要件に「停車」も含まれるという検察側の主張を退けつつ、妨害から停車、その後の暴行を一連の行為としてとらえることで有罪を認めた。

 判決に対しては「危険運転の解釈が広い印象がある」(ベテラン刑事裁判官)との声が上がっている。弁護側が控訴した場合、解釈が上級審でも激しく争われるのは必至だ。

 もっとも、高速道路上での意図的な停車が危険なのは明らかで、「危険運転に該当する」との検察側の主張には説得力があった。弁護側も「処罰感情と法制度との間に大きな乖離(かいり)が生じている」と認めている。法廷での争いとは別に、危険で悪質な運転を取り締まることができるよう、国会も法改正を検討すべきだ。(飯塚直人)

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井田良・中央大院教授(刑法)の話

 危険運転致死傷罪は、少なくとも時速20~30キロの走行を前提としている。判決が停止を危険運転と認めなかったのは、当然だ。被告の暴行などもあって死傷につながったと判断したことで、拡大解釈にも歯止めをかけた。常軌を逸した妨害運転そのものも、暴行罪と認定できる。同様の事件が今後あった場合は、傷害致死罪などでの立件も検討すべきだ。

元検事・高井康行弁護士の話

 高速道路では停車や低速度の走行がむしろ、危険運転の構成要件の「重大な危険を生じさせる速度」にあたる。運転は車を発進、走行、停止させる行為から成り立ち、「運転」に停車が含まれるのも明らかだ。停車と暴行を一連の行為ととらえ、事故との因果関係を認めた点は妥当だと思うが、停車そのものを危険運転と認定した方がすっきりするのではないか。