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 「家畜写真家」という肩書の女性が札幌市にいる。全国の牧場や養豚場を巡り、その表情を撮り続ける。

 札幌市出身の瀧見明花里(あかり)さん(27)。2017年8月から、家畜写真家「AKAPPLE(アカップル)」を名乗っている。大学卒業後、三つの会社に勤めたが、しっくりこなくて、どこも1年かそれ以下で辞めた。

 自分は何がしたいのだろう。

 見つめ直すと、写真が好きなことと、1次産業に関わりたい思いが最後まで残った。「好きな二つをくっつけたら、何とかできるんじゃないかと思った」

 原点は、最初の会社勤めの後、ワーキングホリデーで働いたニュージーランドの農場で子牛の死に直面したこと。早産で生まれ、寒さで衰弱していたため抱いて温めた。でも、助かる見込みがないのに生かしておくのは、ずっと苦しませることになる。何とかならないの? オーナーに何度も尋ねたが判断は覆らず、天国へ送られた。しばらく涙が止まらなかった。

 作品は、動物の顔をアップでねらったものが多い。 「表情を見せたいんです。モノではなく動物として意識してほしいから」

 牛の前でしゃがみ、ニワトリでは寝っ転がって、視線の下から撮ることを心がける。「豚はすごく難しい。ずっとえさを食べて下を向いているし、品種によっては垂れ耳で目が隠れるので」。普段、何げなく口にしているのは、一生懸命に生きていた命なんだということを分かち合いたい。

 18年秋、クラウドファンディングで資金を募り、「日本一周農家旅」と銘打って各地の牧場や養豚場、養鶏場など約40カ所を回った。食肉処理や出荷はつらくて立ち会えない人が、畜産農家にもいた。乳量が少ない牛を「こいつ、かわいいから残してんだ」という酪農家の言葉にほっとした。

 大切に育てながら、おいしい肉や牛乳、卵を作ろうと懸命になる生産者の姿に触れた。肉を買うときは、個体識別番号をもとにどこの農家の肉か検索するようになった。

 19年は再びニュージーランドに出向いて撮影し、20年には五輪・パラリンピックに沸く東京で写真展を開く宿題を自らに課す。「『いただきます』を世界共通語へ」をテーマに。(片山健志)