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 ブラジルの大統領に1日就任したジャイル・ボルソナーロ氏(63)は極右の元軍人。「軍政時代はよい時代だった」などと発言し、物議を醸してきた。かつて拷問を受けた人々は「歴史がゆがめられる」と心配している。(サンパウロ=岡田玄)

 「ボルソナーロが大統領になったら、左派にゆがめられた歴史教科書は見直すことになる」。大統領選と同時に行われたサンパウロ州議会選で当選したオスカル・カステロブランコさん(55)は力を込めた。ボルソナーロ氏の社会自由党所属だ。

 オスカルさんの祖父の兄は、1964年から85年まで続いた軍事政権の大統領、ウンベルト・カステロブランコ将軍。「軍政が独裁だったという考えは間違っている。軍政がもたらした規律と、全体主義を混同したものだ」と訴える。

 オスカルさんはボルソナーロ氏とは軍時代からの友人。「今は静かな戦争中なんだ。お前の助けが必要だ」と口説かれ、立候補を決意した。

 選挙スローガンは「右向け右」。軍隊のかけ声に左派政権の政策をただす思いを込めた。軍政時代の再評価も、その一つだ。

 かつて軍政以前は左派的なポピュリストが政権を握っていた。キューバ革命直後でもあり、社会変革を求める農民運動や労働組合のストが活発化していた。オスカルさんは軍のクーデターを「革命」と呼び、「共産主義者の独裁から解放するため軍政は必要だった。軍人たちは国を救った英雄だ」と言う。

 今回の選挙結果も、軍政開始の64年になぞらえている。2003年から政権を担った労働党は、貧困層支援や性的少数者の権利擁護などに取り組んだが、ルセフ大統領のころに経済が失速。大規模な汚職事件も発覚し、支持を失った。

 「今度はボルソナーロがブラジルを変える番だ。彼は家族の価値を取り戻し、市民の権利を守る人物だ。教育も取り戻す」

教育現場にも権力者の影

 軍政の評価は分かれる。治安がよく、夜でも女性が一人で歩けたという人もいるが、「いい時代だった」と公言することは、はばかられてきた。

 サンパウロカトリック大学のルイス・アントニオ・ジアス教授(歴史学)は「ブラジルでは常に権力を持つ者が歴史を語り、それを教えてきた」と話す。

 1930年から長く大統領の座にあったバルガス氏は、経済を発展させたと英雄視されていた。ところが軍政は独裁者として描くよう歴史を書き換えた。

 民主化後は、軍政時代に亡命していたカルドーゾ氏ら弾圧を受けた側が権力を握った。この頃の歴史教科書は、軍政に抵抗する市民を強調した。

 2011年に大統領となったルセフ氏は、自身が軍政時代に拷問を受けた。ルセフ政権は軍政を検証する「真実委員会」を設置。拷問や殺害を命じた軍元幹部らに証言させた。ルセフ氏が爆弾テロをする反政府ゲリラのメンバーだったとの証言も出たが、ルセフ氏は沈黙。「真実が語られていない」との批判が出た。

 16年、汚職事件などで支持を失ったルセフ氏は罷免(ひめん)された。政治不信から、軍の介入を求める声も出てきた。ジアス教授は「ボルソナーロ氏や右派は『悪い左翼、共産主義者に対しては殺害や拷問は仕方がなかった』と主張し、軍政を相対化した」と指摘する。

 隣国ベネズエラで、マドゥロ政権が強権的な支配を強めたことも、「左翼への恐怖心」を広げ、影響を与えたとみる。

 ボルソナーロ氏は、学校教育に左翼思想が入り込んでいるとして「党派色のない学校」にすると主張している。ジアス教授は「学校で政権が望む教科書を使うよう義務づけられたり、軍政を独裁と呼ぶのを禁じられたりする可能性がある。教科書の書き換えは歴史家の協力も必要で簡単ではない。でも、10年後、20年後は、どうなっているか。軍政期と同じことが起こるのではないか」と話す。

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