【動画】野村煎豆加工店で作られるミレービスケット=清野貴幸撮影
[PR]

 「ミレー」といえば、フランス人なら「落ち穂拾い」。だが高知県民にはビスケットだ。発売以来60年以上愛されてきたおやつは、タレントのマツコ・デラックスさんの絶賛も後押しし、人気は今も全国に拡大中。メーカーは来春、工場を初めて増設し、増産体制に入る。うまさには、作り手にも長らくわからなかった秘密があった。

 円形で縁はぎざぎざのミレービスケット。作り方はシンプル。小麦粉、砂糖などが原料の生地を揚げ、塩や調味料をまぶすだけ。

 「これ止まんないの。おいしいよね」。2016年、マツコさんがテレビ番組でミレーを絶賛すると、爆発的に売れ始めた。

 番組内でマツコさんが訪れた東京・銀座の高知県のアンテナショップでは、売り場の一番目立つ中央に専用コーナーを設けている。放送から2年半すぎたが、人気は落ちないという。

 「普通の駄菓子がなんでこんなにも売れるんでしょうね」。郷土料理などの飲食店が並ぶ高知市中心部の観光名所「ひろめ市場」。土産物店の店長林直樹さん(53)は不思議がる。地元では、幼いころからのなじみの味だ。

 だが、揚げたビスケット生地は香ばしく、いったん口にするとやめられない。ニンニク、ショウガ、ブラックペッパー、トリュフなど味付けは多彩だが、やはり定番の塩味がいい。

 ミレーは、高知市の豆の加工販売業「野村煎豆(いりまめ)加工店」が製造する二次加工品だ。元々は取引先の明治製菓(当時)が「ミレー」の商品名でビスケットを販売していた。1955年ごろ、同社から生地を仕入れた野村はそれを揚げて味付けし、「ミレービスケット」と名付けて売り出した。

 味や風味の謎が判明したのは、販売開始から40年余りたった98年の高知豪雨だ。大雨で一つしかない揚げ釜が浸水した。約1カ月の休業を経て製造を再開すると、風味が足りない。調べると、新しい油だけで揚げているためとわかった。

 それまで空豆などを揚げた残りの油をミレー用の油に少しずつ混ぜていた。油に溶け込んだ豆のエキスが絶妙の風味を出していたらしい。「豆汁がうまい具合にしみこんで配合されていたんやろね」。野村有弘専務(75)は振り返る。

 08年、東京であった流通業者が集まる商談会に出品すると全国から注目を集め出した。関連企画の「スーパーマーケットで買いたい! フード30選」に12年から4年続けて選ばれた。「昔なつかしい、誰にでも愛される素朴な味で、甘さと塩味がちょうどよいバランス」などと審査員から評価された。

 当初、知名度は西日本に限られていたが、各地の生協が扱い始め、東日本にも広がった。今ではインターネットの主要な通販サイトで取り扱いがある。

 野村は需要に対応するため、第2工場を来年3月末までに完成させる計画だ。今年度の売り上げは10年前の約6倍に当たる約20億円と見込み、うち8割をミレーが占める。ミレーだけの売り上げはこの3年間で2・5倍に増えたという。(清野貴幸)

日常用からご当地銘柄まで多彩な需要取り込む

 「日本全国ご当地スーパー掘り出しの逸品」の著書があるスーパーマーケット研究家の菅原佳己(よしみ)さんの話 ミレービスケットは、袋に「よさこい」などを描いた土産用、低価格の詰め替え用、小袋に入れた子ども向けの日常食用などと、様々な使い道に合わせた商品展開が魅力だ。多彩な味も用意し、トリュフ味などレアな種類もあり、ご当地モノ好きの需要も取り込んでいる。野村煎豆加工店のホームページには必要最低限のことしか書かれておらず、ミステリアスな部分も味わいだと思う。

     ◇

 〈ミレービスケット〉 「ミレー」という名称のビスケットを売り出していた明治製菓の販売終了後、同社の生地作りは三ツ矢製菓(名古屋市)に引き継がれた。三ツ矢によると、高知県の野村煎豆加工店のほか、愛知、静岡、岐阜にある計5社に生地を納入しているが、6社のうち野村への納入量は全体の半分を超えているという。各社はそれぞれ「ミレーフライ」「ミレービスケット」などの商品名で販売している。