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■連載 「この部屋で」 住まう人の数だけ、暮らす部屋への思いがあります。様々な部屋と心の風景を描きます。

住人 女性・87歳

物件 サービス付き高齢者向け住宅

広さ 約18平方メートル(自室)

月額費用 約21万円

 格子戸が開くと、250種類以上の昔なつかしい駄菓子がずらりと並んでいる。ラムネ、梅ジャムせんべい、くじつきチョコレート。お小遣いを手にした子どもたちは、お菓子選びに夢中だ。

 お勘定場に腰かけ見守るのは、店番の式守悦子さん(87)。傍らに、いつも使う歩行器が置いてある。足腰が痛むが、自分でお直ししたワンピースに赤い靴といった、おしゃれをして店に出ると痛みも忘れる。もともとは、銭湯のおかみさん。接客は体にしみついている。

 「はい、410円。どうも、ありがとね」。ゆっくりお菓子を袋に入れ、お釣りを渡す。小学6年の男の子は「優しくて楽しくて、本当のおばあちゃんみたい」。保護者たちも「あったかいふれあいが、うれしいです」。式守さんは「この年で役割が持てるなんて、幸せです」と話す。

 実は駄菓子屋があるのは、3階建てのサービス付き高齢者向け住宅「銀木犀(ぎんもくせい) 浦安」(千葉県浦安市)の1階だ。式守さんは、71歳から99歳までの入居者42人の1人として、一昨年1月から暮らしている。

 運営会社が駄菓子屋を併設したのは、認知症の入居女性が「子どもが来るとうれしいな」とつぶやいたのがきっかけだ。地域とつながり、必要とされる存在だと実感してもらい、最期まで元気に暮らせる「第二の我が家」であってほしい。そんな願いから生まれた。

 店を開けるのは午前10時~午後5時、多い時は1日200人以上が訪れる。式守さんはほぼ毎日、2~3時間は店に出る。

     ◇

 1931(昭和6)年、東京・南千住で銭湯を営む両親のもとに生まれた。6人きょうだいの長女で、幼いころから番台に座り、「お風呂屋のえっちゃん」とかわいがられた。戦争で店を閉め、石川県に疎開。戦後東京に戻り、18歳で結婚した。

 夫婦で営んだ東京・木場の銭湯は2階建てで、娘2人と義母のほか、住み込みの番頭ら計10人ほどが寝食を共にしたこともある大所帯。一升五合のご飯をおひつに盛り、にぎやかに食卓を囲んだ。

 やがて家庭風呂が普及し、60歳で廃業。

 幼いころから50年以上なじん…

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