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 大災害は宗教者を突き動かす。阪神大震災で、東日本大震災で、熊本地震で、がれきを片づけ、炊き出しをした。亡き人を弔い、祈り、物心両面で被災者を支える。宗教・宗派を問わず、悲しみ、苦しみに向きあう「臨床宗教師」も生まれ、各地で活動している。

 24年前の阪神大震災を機に、心のケアへの関心が高まった。05年のJR宝塚線(福知山線)脱線事故の後には宗教や医療、福祉の専門家が日本スピリチュアルケア学会を設立した。

 そして11年の東日本大震災を機に、臨床宗教師が生まれた。在宅緩和ケア専門医の故・岡部健さんが、欧米で心のケアを担うチャプレンを手本に提唱した。

 16年に全国組織「日本臨床宗教師会」ができ、18年3月から資格認定が始まった。被災地などで臨床宗教師を勝手に名乗り、勧誘に悪用される例があったからだ。宗教・宗派を問わず、18年9月までに159人が認定された。仮設住宅で、お茶を飲みつつ被災者の話を聞く「カフェ・デ・モンク」も開く。同会の鍋島直樹・事務局次長は「亡くなった人をしのび、生前の本人や遺族から聞いたその人の愛情、ぬくもりを次の世代に伝えることも臨床宗教師の役割です」と話す。

 各宗教団体による被災地支援も盛んだ。

 天理教は1891年の濃尾(のうび)地震以降、1923年の関東大震災、59年の伊勢湾台風などで支援実績があり、71年には「災害救援ひのきしん隊」を結成。現在の隊員は5千人にのぼる。

 阪神大震災では延べ2万人、東日本大震災は延べ3万人の隊員が活動。被災地では重機を使い、土砂の搬出や家屋の解体など一般のボランティアができない作業も担う。食料やテント、仮設トイレなどは自前で用意する。隊員は毎年1泊2日以上の訓練を重ねる。

 なぜ大規模な支援を続けるのか。隊の田中勇文(いさふみ)本部長(52)によると、天理教の教えでは、体は神さまからの借り物で、借りていることに感謝し、神さまに恩返しすることを「ひのきしん」と呼ぶ。「この精神が災害支援に結びついている」という。

 阪神大震災以降、自治体やボランティアとも連携する。自治体の担当者から「政教分離があり、宗教団体はちょっと……」と言われることがあるが、隊の中川徳弘副本部長(55)は「布教や勧誘活動をすることはない。行政の理解が進めばスムーズな支援活動につながる」と話す。

弓山達也・東工大教授(宗教学)の話

 阪神大震災以降、宗教者が祈り、苦に寄り添う本来の務めを果たしている。被災者にとっても、宗教の伝統の力や文化的な背景から「宗教者なら話せる」という安心感がある。近年は宗教者がSNSを通して、被災地で何が不足しているかを共有し、同時に互いの活動をチェックしていることも特徴だ。

 一方、炊き出しや子どものケアなど宗教者ひとりが全てに関わるのではなく、医師やNPOとの分業も必要だ。東日本大震災では寺社が避難所になったが「政教分離」から、物資が行政から届かない例もあった。行政との連携が課題だ。