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 車をつくる会社からモビリティーカンパニーに――。トヨタは生き残りをかけ、異業種との連携など変革を急ぐ。その姿を追った。

【第一のカギ】次世代技術、「本気」の提携

 「車をつくる会社から『モビリティーカンパニー』をめざすには、ソフトバンクとの提携は必要不可欠だ」。昨年10月4日、トヨタ自動車の豊田章男社長は東京都内の記者会見でこう語り、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長とがっちり握手を交わした。移動サービスの提携と新会社設立を発表した。

 実現に向け、動いたのはトヨタの方だった。

 8月9日、豊田氏は東京・汐留にあるソフトバンク本社を訪ねていた。26階の役員フロア。レインボーブリッジを望む一室で孫氏は豊田氏を丁重に迎え入れ、ひざをつき合わせた。

 自動車会社のトヨタと、通信分野と人工知能が得意なソフトバンクが手を結べないか。なごやかに話が進んだ。あらゆる移動サービスを手がける「プラットフォーマー」をめざすことについて、「やれるね」と一致。共同出資で新会社「モネテクノロジーズ」の設立が決まった。

 豊田氏は「(投資の)目利き力はトヨタの10周先を行っている」と、ソフトバンクに一目置く。「トヨタとして自動運転をやっていくために(海外の配車サービス会社など)他社との提携を進めると、必ず孫さんが(大株主として)前に座っていた」(豊田氏)。これが、距離を縮めるきっかけになった。

 出資比率はソフトバンク50・25%に対し、トヨタが49・75%。「結果的に、トヨタがソフトバンクに頭を下げるかたちで実現した。そこに、むしろトヨタの『本気』を感じる」(大手金融機関首脳)。ソフトバンク幹部は「豊田社長には結構折れていただいた」と明かす。

 「次の100年も、車は主役でいられるだろうか。異業種を巻き込んだ、生きるか死ぬかの闘いが始まっている」。譲歩してでも提携を実らせた背景には、豊田氏の強い危機感がある。

 若者を中心に消費志向が変化し、モノやサービスを分かち合うシェアリングエコノミーが広がっている。車も例外ではない。人口減少もあって自家用車の販売は伸び悩む。創業から80年余、自動車メーカーとして歩んできたトヨタは、車をつくって売るビジネスモデルからの脱却を急ぐ。

 次世代技術の革新もめまぐるしい。自動運転や電動化、コネクテッド。これらすべてをトヨタ単独で手がけることには困難が伴う。そこで力を入れるのが、「仲間づくり」。異業種提携もその一つだ。人々のさまざまな移動を助けるモビリティーカンパニーになるためには、これまでの「自前主義」のこだわりは捨てる気構えだ。

 実際、トヨタの動きは活発だ。米ウーバー・テクノロジーズやシンガポールのグラブの配車大手に相次ぎ出資。グラブのアンソニー・タン最高経営責任者は豊田氏に会うために7月に来日し、「改善精神を教えてもらい、さらに効率のいい配車サービスを構築できると感じた」と話す。中国のライドシェア大手の滴滴出行(ディディチューシン)とは移動サービス分野で協業を決めた。

 コンサル大手アクセンチュアによると、世界のモビリティーサービスの市場規模は2030年までに1・2兆ユーロ(約150兆円)まで拡大する。トヨタに限らず、米国や中国のIT大手が、圧倒的な資金力をバックに次世代技術開発でうねりを起こす。例えば、自動運転技術の開発に熱心な中国の「百度(バイドゥ)」。中国を網羅する地図サービスなどを国内外メーカーに開放し、米欧の自動車や半導体の大手など100社以上と協業する。

「スピード感が足りない」

 トヨタは「仲間の輪」をベンチャー企業にも急速に広げる。カーシェア拡大、移動データとSNS投稿を組み合わせた販売の手法、中古車ビジネス強化などの新サービスを共同で開発。自社にはない技術や人材はベンチャーの力も借りる姿勢が鮮明だ。

 ところが、ある協業先は「トヨタにはスピード感が足りない」と、いらだちを隠さない。

 最近トヨタとのやり取りが急に…

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