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 巨大な円柱形の建物に、楽器のケースを手にした人たちが吸い込まれていく。

 「吹奏楽の聖地」と呼ばれたが、耐震強度不足がわかり、6年前から使用中止になっていたホール「普門館」(東京都杉並区)。11月上旬、解体前の1週間だけ一般開放された。

 来場者を久しぶりに迎える維持管理グループ主任の男性(63)は舞台の下手で、人知れず緊張していた。

 「試み」はうまくいくだろうか。

 男性はあらかじめ、客席に音を届け続けてきた7枚の反響板を、舞台の上に並べていた。来場者にメッセージを書いてもらおうと考えた。カラヤン指揮のベルリン・フィル公演の前、旧西ドイツの技師につくらせた自慢の反響板だ。高さ7メートル、幅2メートル。7枚で1週間分のはずだった。

 ところが、板は3日で感謝の気持ちで埋め尽くされた。

 「普門館の経験があるおかげで、今の私があります」

 「私の一生の宝物です」

 「ありがとう普門館」

 無人の客席に向かって、スネアドラムをたたく人もいた。「私の楽器はここでよかったでしたっけ」。かつて出場したコンクールでの配置の通り演奏したいという。しゃがみこんで、黒光りする床に手のひらをつけ、舞台を体で感じようとする人もいた。

 自分はこんなに愛された場所で…

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