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 スマートフォンで、自撮り用のアプリを起動する。鏡のように画面に映ったのは、女子大学生のもーちぃ(19)。インカメラを自分に向けたまま、スマホを友人に手渡す。「もう少し高いところで持てる?」。スマホを持つ友人の手を、少しだけ高く、移動させる。自分だけが知っているベストアングル。ここだというところで、シャッターを押してもらう。

 自撮りではない。「他撮り」だ。あるいは「他撮り風の自撮り」と呼ぶ。自撮りのときのように、インカメラで自分の表情を確認しながら撮影できる。できあがった写真には、他人が撮ったような姿で写ることができる。自撮りと他撮りのいいとこどり。

 「自撮りよりも他撮りの方が、イイネがつきやすいんですよね。他撮りなら、自撮りのときだけじゃなく他人が撮ってもかわいいんだという意味を出せるんです」

 もーちぃはそう語る。

 他撮りのときは、両手をフレーム内にはっきりと写し込むのがポイントだ。撮影で自分の手や自撮り棒を使っていないという、「無実」の証明だ。

 昨年10月。友達と「映(ば)え会」を開いた。映えは、「見栄えする」の、ばえ。特にソーシャルメディアでの見栄えを指す。「映える」は、三省堂の「辞書を編む人が選ぶ 今年の新語 2018」にも選ばれた。アイス屋、タピオカ屋、古着屋。写真映えする建物や食べ物が手に入る店を友人と2人で転々としながら、撮影を繰り返した。

 目的は、自分がよく見える写真を撮ること。すなわち「盛る」ことだ。会は「どれだけ『盛れる』かの戦い」だと、もーちぃは形容する。相棒もまた、自撮りや「盛り」への意識が高い「映え友」。目の大きさや、肌のきれいさ、顔の形などを微修正できる自撮りアプリを使う。アングルや表情を変えながら、1日で700枚ほど撮影した。「700枚撮っても、本当に納得いくのは5枚くらいなんですよね」。お気に入り以外は削除した。

 「自撮りは、見た目がいい人が、自慢するためにやっていると勘違いされるんですけど、実際は自分の見た目の短所を知っている人やコンプレックスを抱えている人が、2次元だけでもよりよい自分になろうとするために、していると思います」

     ◇

 自撮りに目覚めたのは小学生のときだった。小学2年でコリアンタウンとして知られる東京・新大久保に引っ越したが、転校先の学校にはなじめなかった。同級生に「ブス」と言われ、いじめられた。ストレスのせいか、耳が聞こえなくなったこともあった。

 「身近な人たちからは『かわいいね』と言われて育ったのに。急に『ブス』と言われたのは、しんどかったですね。ああ私って、ブスなんだって、思うようになっちゃった」

 小学校高学年のとき。iPod Touchを買ってもらった。インカメラとの出会いだった。

 「角度一つで、自分がかわいく写ると気付いた。自撮りの中でなら、かわいくいられるかもしれないと、気付いたんです」

 ファッション誌などでメイクを研究しては、自撮り写真をブログで公開した。アクセス数が増えたり、「かわいいね」とコメントされたりするのが、うれしかった。

 「最初に盛ったのは『年齢』だったかも」。OLだと偽って書いたブログの方が、アクセス数が伸びた。

     ◇

 中学も高校も、行ったり行かなかったりだった。朝、制服に着替えて家を出るが、そのまま原宿の町をふらつくこともしばしばだった。学校に行っても、教室の机に突っ伏して寝ていた。

 高校1年のとき。ネットで自撮りを公開しているのが、同級生にばれた。ネット上の自撮り写真をプリントアウトされ、廊下に貼り出された。ブログで使っていた「もーちぃ」という名前を、同級生が笑いながら口走るのが、聞こえてきた。

 それでも、もーちぃは、自撮りをやめなかった。

 「イヤだったけど、私の中で学校の優先度は高くなかったんです。他の所に友達はいましたし。そういう経験もあって、ネットより現実の方がこわいんですよね。ネットでなら、一番いい角度の、『最高の自分』みたいのを見てもらえる。しんどいときも、自撮りに支えられたところもあったのかもしれない」

もーちぃが使うのは韓国発の化粧品、いわゆる「オルチャンメイク」。「男子ウケ」が悪いそうですが、それでもこだわる理由とは。

 現在は都内の大学に通いながら…

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