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それぞれの最終楽章・口から食べたい(2)

鶴見大学歯学部非常勤講師・飯田良平さん

 亡くなった後に、体を清める「エンゼルケア」を知っている方は多いと思いますが、我々歯科では、「きれいな口で旅立つ」お手伝いをしたいと願っています。今回は、川崎市の林錦司(きんじ)さん(享年80)のケースを紹介します。

 私と錦司さんとの出会いは、2013年9月の大学病院からの訪問診療でした。その2年前から在宅医からの依頼で口腔(こうくう)ケアなどを実施していた(現在私が週に1度勤務する)吉武歯科医院(同市)から、「食べる機能」の精査を頼まれたのです。大腸がん手術後の絶食の影響もあり、食べる力がかなり落ちている、とのことでした。

 それまでの経緯をお話しします。同医院から訪問していた歯科衛生士、齊藤理子さん(46)によると、錦司さんは4回の脳梗塞(こうそく)を経験していましたが、ほぼ通常の食事をとっていたそうです。通常食に近い刻み食、水分は軽いとろみをつける程度で大丈夫でしたので、そうした食べる機能が落ちないよう、定期的な訪問で「食べる力」の維持に努めていました。

 錦司さんは高次脳機能障害もあり、言葉はほとんど出ませんでした。でもスリッパを履いていないときには、「履きなよ」と気を遣うような優しい方だったそうです。

 齊藤さんは、口の中をスポンジブラシなどできれいにする、いわゆる「口腔ケア」のほか、様々な方法で「食べるためのリハビリ」を試みました。具体的には、「パ・タ・カ・ラ」と発音したり、舌を前後左右に出したりして、口の周りの筋肉を鍛えるのです。縁日などで売っているおもちゃの「吹き戻し」を使うこともありました。

 特に、よくやっていたのは童謡を一緒に歌うリハビリです。もしもしかめよ♪の「うさぎとかめ」や、でんでんむしむし♪の「かたつむり」などの歌詞をスケッチブックに書いて、それを見てもらいながら、一緒に歌いました。無理かと思えたときにでも、あきらめないで歌い続けていると、わずかに口が動き、たしかに歌を口ずさむ動きとなりました。

 およそ半年を過ぎると、上達してきました。吹き戻しも「ピー」と勢いよく2~3回できるようになりました。童謡もおなかから声が出て上手になってきました。

 ところが13年3月、虚血性大腸炎と大腸がんで入院。手術後、絶食して点滴のみの期間がしばらく続き、(胃に穴を開けチューブで直接栄養を入れる)胃ろうをつけることになったそうです。そのため、再度、口から食べるためには専門家の評価が必要だろうとなって、大学病院に先の依頼があったわけです。

 退院後に私は、鼻から細いカメ…

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