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【アピタル+】患者を生きる・食べる「ギラン・バレー症候群」

 体にまひやしびれがでる「ギラン・バレー症候群(GBS)」。食中毒や風邪がきっかけになることが知られています。神経内科が専門でGBSに詳しい杏林大学医学部の千葉厚郎教授(59)に病気の特徴や治療法について聞きました。

――どんな病気でしょうか。

 脳や脊髄(せきずい)と感覚器をつなぐ末梢(まっしょう)神経の病気です。発症前に食中毒や風邪にかかっている患者が多く、細菌やウイルスを排除するために働く免疫が、誤って自分自身の末梢神経も攻撃してしまうことで起こると考えられています。運動神経が攻撃された場合は、電線が断線するように、脳や脊髄からの指令が筋肉に伝わらなくなり、体が動かなくなるのです。

ギラン・バレー症候群(GBS)
脳からの情報を筋肉などに伝える末梢神経が侵されて、まひやしびれなどが出る病気。患者は人口10万人あたり年間1人程度で男性にやや多い。

――GBSのきっかけとして鶏肉を主な感染源とする細菌「カンピロバクター」による食中毒が有名です。

 カンピロバクターによる食中毒からGBSになる人は年間1千人に1人程度です。カンピロバクターにもいろんな株があり、人の末梢神経組織と一部似た構造をもつカンピロバクターに感染すると発症する可能性があります。免疫がその構造を目印に攻撃するため、末梢神経も一緒に壊されてしまうのです。また免疫反応が強い人など患者側の違いも関係します。カンピロバクターでGBSになった人は、力が入りにくいなど運動神経に障害を受けることが多いです。

写真・図版

――どこまで悪くなるのでしょうか。

 症状は急速に進み、2週間以内で最も悪化した状態になる人が約8割です。人によっては手足だけでなく、顔も目も舌も動かせず、意識はあるのに表現できない「閉じ込め状態」になる人もいます。呼吸筋をつかさどる神経が侵された場合、一時的に人工呼吸器が必要になる人もいます。

――命に関わる可能性は。

 世界的に見ると死亡率は5%程度です。日本の場合医療環境が整っているので、人工呼吸器をつけ損ねて亡くなるということはまずないです。死亡率はもう少し低く、全国調査では約1%と報告されています。亡くなるのは、高齢の方が感染症などの合併症になったり、重症の方が自律神経も侵されて致死的な不整脈になったりする場合が考えられます。

――どのように治療しますか。どれくらい良くなるのでしょうか。

 血液製剤を大量に点滴する方法と神経を攻撃する物質をろかする血液浄化療法が主な治療法です。動かなくなった体がメキメキ良くなるというものではありませんが、あまり重症にならないようにするといった効果が期待できます。血液製剤の大量点滴や血液浄化療法を受けた人の1年後を調査すると、6割は完全に回復していました。また、これまで主に重症の人の話をしてきましたが、手足がしびれるだけなど軽症の人も多いです。こうした人を含めると、1年後までに完全回復する割合はもう少し高いと思います。

――完全回復に至らなかった人はどうでしょうか。

 まひが残った人を10年、20年と追跡した調査はまだないです。しかし、GBSは末梢神経の病気で、神経が再生されていけば症状は良くなっていくはずです。また動かないでいると、関節が固まって、可動域がせまくなってしまいます。やり過ぎは禁物ですが、あきらめずリハビリを続けて行くことが大切です。

 ◇ご意見・体験は、氏名と連絡先を明記のうえ、iryo-k@asahi.comメールするへお寄せください。

<アピタル:患者を生きる・食べる>

http://www.asahi.com/apital/special/ikiru/(聞き手・水戸部六美)