【動画】「親子で食のサバイバル ~防災食の調理体験会」=石山英明撮影
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(エムスタ イベント)

 災害時の食事を、少しでも簡単に、おいしく食べられたら――日頃からの食の備えや「防災レシピ」を親子で学ぶイベントが1月19日、東京・新宿にある東京ガスのクッキングスタジオで開かれました。朝日新聞エムスタと東京ガスの共催。親子7組が参加しました。

 講師は管理栄養士で防災士の今泉マユ子さん。まずは防災食の代表格、乾パンをおいしく食べるには。

 「ご高齢の方には、乾パンは固かったり飲み込めなかったりとそのまま召し上がれず、水でふやかす方も。そんなとき果物の缶詰があれば、シロップに漬けて甘く軟らかく食べられます」。あんこやゆで小豆の缶詰で「おしるこサンド」のように食べたり、マヨネーズをつけたりするのもおすすめだそう。

 続いて紹介するのは本日のメイン、「お湯ポチャ調理」。災害時はカセットコンロを使います。

 「災害時に皆さんがおっしゃるのは『温かいものが食べたい』ということ。温かいものは生きる気力になります」と今泉さん。「パッククッキング」や「ポリ袋調理」とも呼ばれる調理法です。今泉さんは「災害の時でもゆるゆると取り組んで欲しい。ああしなきゃ、こうしなきゃ、ではなくて」という思いから、「お湯ポチャ」と名付けたといいます。

 この調理法、さまざまな利点があります。家にあるものでできること、お水が汚れないこと、ご飯もおかゆもおかずも同時に作れること、食材が混ざらないのでアレルギー対応も可能なこと、大人数にも対応できてそのまま分配できること、袋から食べれば洗い物も出ず、節水にもなること――。

 注意が必要なのは、必ず「高密度ポリエチレン製ポリ袋」を使うこと。箱や袋に「耐熱性」「湯煎できる」などと書いてあるものが多いそうです。透明ではなく、少しくすんでいるのが特徴です。

 まず、ご飯を炊きます。この日はお米1合とお水1カップ(200ml)でしたが、2合、3合分を炊きたい場合は「同じ袋に全部入れてしまわずに、二つ、三つと、1合ずつ入れた袋を増やしていって下さい」。今泉さんの解説に、参加者の方々が深くうなずきながらメモをとります。

 ちなみに、計量カップがない場合はどうすればいいのでしょうか。「大丈夫。紙コップでも代用できます。紙コップすり切り1杯のお米と、それよりもちょっと多めお水を入れる、と覚えておいて下さい」

鍋にお皿、ポリ袋をポチャリ

 さて、調理開始。「お米とお水を入れた袋は、ねじねじねじっと巻き上げて上の方で結びます。空気が入っていると、湯煎している間に空気が膨らんで、パーンと……」。そうならないよう、なるべく空気を抜いて、上の方をしっかり結びます。

 お鍋は、フタ付きであればどんなものでも大丈夫。お水の量は半分以下から3分の1程度に。袋を入れたとき、量が多いとあふれてしまいます。

 お鍋の底にはお皿を敷きます。袋が鍋底に直接当たって、袋が溶けてしまうのを防ぐためです。お皿の上に、先ほどのポリ袋をポチャリ。ふたをして火にかけます。お皿がなければ菜箸を並べて置くなどして、袋が鍋底に触れ続けるのを避けましょう。

 鍋の水が沸騰したら、中火にして20分待ちます。火を止めたら、さらに余熱で10分。開封の際は、やけどに注意しながらトングや菜箸を使ってお湯から出し、結び目の下をハサミで切ります。想像以上にフワッと、おいしく炊けていることに驚きます。

 食べる時もこの袋をそのまま使うのが、今泉さんイチ押しの防災の知恵。袋を茶わんなどの器にかぶせてそのまま食べれば、器が汚れず洗わなくて済むので合理的です。「ラップやホイルを敷くより食べやすいかもしれません」

 続いて、高野豆腐を使った麻婆豆腐も。高野豆腐は保存が利くため、防災食の例に挙げられますが、「普段食べないので使い方が分からない」という人もいるとのこと。一口サイズの高野豆腐1袋分(18個)にお水1カップ、そこにレトルトタイプの麻婆豆腐の素を入れます。

 ここで「レトルトの女王」の異名もある今泉さんから、貴重なアドバイス。「レトルトは温める前に、パックをもんだり振ったりしてみて下さい。中で分離していることもあります。たとえばレトルトカレーを50回振れば、振らなかった時より必ず味がまろやかでおいしくなっています」。早速、実践したくなる知識です。

 ポリ袋に高野豆腐とお水とレトルトを入れ、よくもんで混ぜます。お米の時と同様、空気を抜いて結んで鍋に入れ、沸騰したら中火にして15分温めれば食べられます。ご飯と同じ鍋で一緒に作る時は時間差を気にせず、それ以上温めてもOKです。

苦手な食材、おいしく食べられた

 後半では、大正時代から料理教室を開いてきたという東京ガスの「食」情報センター、杉山智美さんから、「ローリングストック」という備蓄方法の紹介がありました。

 災害のために備蓄した食品も、気がつくと賞味期限が切れていて、無駄にすることも。いつ起こるかわからない災害だからこそ、長く保管できるものより日頃から食べているものを蓄え、使いながら買い足すのが合理的です。食べ慣れ、作り慣れ、備蓄場所も覚えておける、という新しい視点。普段から親子で節水を意識しながら調理したり、ランタンやロウソクの明かりで食べたりする「サバイバルナイト」のような災害教育、「災育」の提案もありました。

 講義の後は、参加者の方々が親子でキッチンスペースに移動し、実際に調理しました。

 麻婆高野豆腐丼だけでなく、焼き鳥の缶詰を使ってフライパンで作るライスピザ、トマト缶とミックスビーンズ缶を使った押し麦入りミネストローネにも挑戦。お父さんお母さんや今泉さん、東京ガスのスタッフの人たちのアドバイスを聞きながら、真剣な表情で調理する子どもたちの姿が印象的でした。

 初対面の子と調理台で一緒になっても、「こっちやるね」「もう少しかな」と会話が生まれ、スムーズに作業が進んでいます。鍋に浮かんだアクを丁寧にすくったり、力を振り絞ってミルで黒コショウをひいたり、大人にとってはささいな作業でも、子どもたちは一生懸命です。完成に近づくにつれ、あちこちの調理台から笑い声や歓声があがりました。

 できあがった料理をテーブルに運び、試食会。自分で作った料理を子どもたちが次々と完食しました。「野菜がこんなに入ったミネストローネ、普段は食べないのに」と驚くお母さんも。「お豆腐の臭いとか食感が嫌いで、食べられなかった」という小学5年、石井世理奈さん(11)も、高野豆腐の麻婆丼は「おいしく食べられた」。自分自身でも驚いている様子でした。

 小学1年の原慎次郎君(6)は普段から、「ゆで卵をむく」といった好きな作業を手伝うそうですが、「通し」での挑戦は今回が初めて。「自分で作ると、いつもとちょっと違うし、おいしかった」と答えてくれました。

 今回の教室で扱ったレシピなどを紹介した本「防災レシピ 日々のごはんともしものごはん」は、https://www.tokyo-gas.co.jp/scenter/hibimoshi/別ウインドウで開きますから無料でダウンロードできます。(寺下真理加)