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 クラウド会計ソフトを提供する会社って……。何だか地味で、とても面白そうには思えない。そんな思い込みで臨んだ取材だったが、その起業には熱い思いが込められていた。グーグルを退社して自宅の居間で会社を立ち上げ、雑誌で日本の起業家ベスト10に選ばれた「freee(フリー)」CEOの佐々木大輔さん(38)に聞いた。

 ――どうして、この会社をつくろうと考えたのですか。

 グーグルにいた時、日本では中小企業のネット広告が非常に少ないことを知りました。インターネットは中小企業と大企業を互角に戦わせることができるツールだし、本来は企業規模が小さい方が素早く新しいものを採用できるはずです。

 当時は20代で転職を3回ぐらいしていましたが、初めて仕事に意味があると思えた。自分の成長のためとか、格好いいからではなく、意味があるからやりたいと思うようになった。これは面白いパラダイムシフトを起こすに違いないと思いました。

 ――中小企業を元気にすることにこだわる理由は。

 グーグルでアジア地域全体の責任者になり、日本と他の国を比較する立場になった。すると、日本はかなり見劣りすることに気付いたんです。先進国と比べて企業のテクノロジー活用がまるで進んでいないし、場合によっては新興国よりも遅れている。

 例えば、インドではタクシー運転手が「タージマハールに僕と行くとこんなに面白いよ」なんて動画をユーチューブにアップし、それがどれだけバズる(ネット上で話題になる)かしだいで予約の入り方が違ってくる。

 グーグルの上司が日本に来た時のことですが、FAXで請求書を送る習慣がまだ残っているのを知って驚いていた。日本は、モバイルでも先進的と呼ばれていた国のはずだよねえ、と。

 ITを使って仕事の効率を上げるということへの感度が低すぎる。この流れを変えないと、日本が世界の文脈でかなり見劣りする存在になってしまうと危機感をおぼえたんです。

小ビジネスが力強い社会は健全

 ――実家は美容院だったそうですね。スモールビジネスへの思いは、それが原点ですか。

 祖父がやっていた下町の美容院で戦後まもなく、それまで女性の仕事と思われていた美容師に、男性を採用し始めたんです。地域のマダムが話し相手として喜んでくれました。男性美容師は今では当たり前ですが、その何十年も前に祖父がプチイノベーションをしていたわけです。

 小さなビジネスの方がイノベーションを起こしやすい。ビジネスオーナーは祖父のように自由な価値観を持つことができるわけで、究極の自己表現なんだろうな。小さいビジネスが力強い社会は、健全だと思います。

 ――日本は人口減少に悩み、地方も疲弊しています。そんな困難を企業家として意識していますか。

 人口減少はある意味、チャンスではないかと思います。これまでソフトウェア産業が発達したのは賃金が高い国でした。人手が足りないと、ソフトウェアで代替しないといけないと考えて開発が早まる。

 世の中のメカニズムとして、課題が大きければ大きいほど、テクノロジーが早く広がる。中国でも10年ほど前まで偽札のチェックが課題でしたが、それを乗り越えようとあっという間にスマート決済が広まった。いまやケニアやバングラデシュもすごいです。

 だから、課題が大きい国にスパ…

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