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 宮崎県えびの市の山あいに、温泉水を使って高級魚トラフグを養殖する施設ができた。閉校となった小学校分校の屋内プール跡を利用し、12個の円形水槽(直径4メートル)が設けられた。年が明けて稚魚7千匹の養殖が始まり、1年後の出荷を目指す。

 事業を手がけるのは、大阪市の自動車関連業「PNG」(前野容子社長)。温泉水を使ったトラフグの養殖に取り組む栃木県の「夢創造」(野口勝明社長)から技術支援を受ける。

 PNGの時吉正信常務(52)はえびの市出身。市内の京町温泉に近い実家の敷地内で、かつて父親が温泉を掘り当てた。地上噴出時に41度前後という温泉水を利用できないかと考えていたところ、約3年前、たまたまテレビで夢創造の養殖を見た。「これだ」とひらめき、前野社長らに相談した。

 当初の事業費は約3千万円。昨年11月、市と企業立地協定を結んだ。2005年に休校、09年に閉校となった市立飯野小学校高野分校の跡地(約7460平方メートル)を年間約70万円で借り上げる。旧校舎は事務所として使う。

 夢創造の技師によると、当地の温泉水はアルカリ性の単純泉で塩分濃度は0・3%。くみ上げた温泉水をタンクローリーで運び、人工海水を加えて、トラフグ体内の塩分濃度と同程度の0・9%まで上げる。トラフグは、塩分濃度約3・5%の海水を取り込む際にえらで濃度を下げる調整をしているが、0・9%だと濃度調整の負担が減り、成長が早くなるという。

 水温はトラフグの生育に適した20~25度に保つ。海上養殖の場合、海水温度の低下する冬場は成長が滞るが、そうした懸念もなくなるため、出荷サイズの1キロに育つのに通常の半分の約1年で済むという。

 前野社長は「ふるさと納税の返礼品など、えびの市の活性化に貢献できれば。地元の料理店と一緒に新しいフグ料理の開発にも取り組みたい」と話す。

 7日にあった「温泉トラフグ稚魚の放流式」には高野分校の卒業生4人も招かれ、約3カ月前に人工孵化(ふか)した体長約7センチの稚魚を放した。村岡隆明市長は「中山間地でのトラフグ養殖ということで期待の声を頂いている。全国にPRしていきたい」と述べた。(神谷裕司)