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 東京電力福島第一原発事故による放射線被曝(ひばく)をめぐって東京大の早野龍五名誉教授らが発表した論文に、市民の被曝線量を実際の3分の1に少なく見積もる誤りがあることがわかった。掲載した学術誌にデータの不自然さを指摘する投稿があり、早野氏が8日、誤りを認めた。

 論文は早野氏が福島県立医大の研究者と共同で執筆し、2017年7月に国際専門誌「ジャーナル・オブ・レディオロジカル・プロテクション」に発表した。福島県伊達市の市民がつけていた線量計のデータを基に、原発事故による被曝線量は、市内で最も汚染された場所に70年間住み続けても「データの中央値で18ミリシーベルトを超えない」と結論づけた。

 これに対し、高エネルギー加速器研究機構の黒川真一名誉教授が昨年、論文で示された複数のデータに矛盾があると指摘した。早野氏らが点検したところ、線量計に記録された1カ月分の被曝線量を3カ月分として計算していた誤りが判明、掲載誌に修正を申し入れた。早野氏は「意図的ではなかった」としている。

 そのうえで、誤りを修正しても「避難指示が出されなかった地域では、長期で見れば年1ミリシーベルトを超えないレベルに収まっているはずだ」としている。

 早野氏は素粒子物理学の研究者で、原発事故後はツイッターなどで情報発信を続け、注目を集めた。観測データに基づき県民の被曝線量が低いことも発表してきた。講演でこの研究結果を紹介したこともあった。

 早野氏らが伊達市民の被曝線量を解析した論文はもう1本あり、早野氏はこちらは解析に誤りはないとしている。ただ、黒川氏は「論文中のグラフに不自然な点がある」などと話した。この論文は国の放射線審議会の、放射線から国民を防護する基準の議論にも使われている。

 2本の論文をめぐっては、伊達市が約5万9千人分のデータを研究用に提供したうち、約2万7千人分は市民に提供への同意を得ないままだったことも発覚している。市は第三者を交えた調査委員会を設け、経緯などを調べる。

 東北大学の細井義夫教授(放射線生物学)は、「同意の無いデータを使ったのは大きな問題だ。ただ事故による被曝線量は3倍になっても年1ミリシーベルトに達しないなら健康影響は無いと考えられる」と話す。

 早野氏の論文は(https://doi.org/10.1088/1361-6498/aa6094別ウインドウで開きます)で、黒川氏の指摘は(https://arxiv.org/abs/1812.11453別ウインドウで開きます)で読める。(小宮山亮磨、大岩ゆり、古源盛一)