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 「物語」と「和歌」をテーマに、絵巻や色紙、歌仙絵などを紹介する展覧会が、大阪市北区の中之島香雪美術館で開かれている。なかでも注目は、全17枚が初出展された「伊勢物語図色紙」(室町時代、15世紀)。研究者の間でもほとんど存在が知られていなかったといい、今後の研究が期待される貴重な作品だ。

 朝日新聞の創業者・村山龍平(りょうへい)のコレクションを公開する、昨年3月からの開館記念展の一環で、第Ⅴ期の今展が締めくくりとなる。

 平安時代の初めごろに成立した「伊勢物語」は、後世の物語や詩歌に大きな影響を与え、数々の絵にも描かれてきた。現存する最も古い着色の絵としては、大阪府・和泉市久保惣(くぼそう)記念美術館所蔵の「伊勢物語絵巻」(鎌倉時代)が知られているが、今展の「伊勢物語図色紙」は、それと共通する構図や表現がみられる。

 一方、第四十九段「若草の妹」と推定される絵には、向かい合う男女の間に琴が描かれているが、伊勢物語の第四十九段で琴が描かれている絵は、他に例がないという。林茂郎学芸員は「伊勢物語絵の成り立ちを読み解く、今後の研究材料になりうる」と話す。「伊勢物語図色紙」は前後期で展示替えがあり、1月16日からの後期展示では、第四十九段を含む8枚が展示されている。

 また、同じく初公開の「源氏系図」(室町時代、16世紀)も、見どころに挙げられる。「源氏物語」に出てくる登場人物の家系をまとめたもので、紫式部が源氏物語の構想を思いつく場面が、表紙絵として描かれている。これと似た表紙絵の源氏物語写本の筆者が、室町時代の絵師・土佐光信と考えられていることから、この「源氏系図」も、光信本人、もしくはその周辺で制作されたと推測される。

 そのほか、岩佐又兵衛による「堀江物語絵巻」や、和歌に詠まれた景色をかたどった工芸品なども展示される。「刀剣や仏教美術を集めつつ、こうした情緒あふれる作品も愛した、村山の一面も感じてほしい」と林学芸員。

 2月11日まで。月曜休館(11日は開館)。一般900円など。中之島香雪美術館(06・6210・3766)。(松本紗知)