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 韓国大法院(最高裁)が日本企業に対し、元徴用工らへの賠償を命じた判決をめぐり、日本政府は9日、日韓請求権協定に基づく協議を韓国政府に要請した。日本政府は元徴用工らへの賠償問題は協定で「完全かつ最終的に解決」されたとしているが、韓国の裁判所が新日鉄住金の資産を差し押さえたことから、協議の要請に踏み切った。

 日韓請求権協定に基づく協議は1965年に締結されてから行われたことはない。2011年に韓国政府が慰安婦問題に関して協議を求めたことがあるが、日本政府が応じなかった。日本政府が協議を要請するのは今回が初めて。今後は韓国政府が協議に応じるかが焦点になる。

 韓国大法院は昨年10月と11月に、新日鉄住金と三菱重工業に対し、それぞれ元徴用工らへの賠償を命じる判決を出した。日本政府は「協定に明らかに反する」とし、韓国政府に対して対応を求めてきたが具体策が示されなかった。

 一方、原告側は新日鉄住金が賠償に応じていないとして、同社が韓国の鉄鋼大手ポスコと合弁で設立したリサイクル会社PNRの株式の差し押さえを裁判所に申請し、今月3日付で認められた。新日鉄住金は株式の譲渡や売却などができない状態になり、企業活動に影響を与えることになった。

 新日鉄住金によると、差し押さえに関する裁判所からの通知がPNRに9日、届いた。これを踏まえ、外務省の秋葉剛男事務次官は同日、協定の解釈に紛争があるのは明らかだとして、韓国の李洙勲(イスフン)駐日大使を呼び、協議を要請した。

 韓国大統領府は9日の幹部会議で、元徴用工判決に関する問題も協議した。文在寅(ムンジェイン)大統領は欠席した。韓国外交省は9日夜、日本政府の協議要請について、「綿密に検討する予定だ」と表明。そのうえで、「司法手続きを尊重する基本的立場のもと、被害者の精神的苦痛と傷を実質的に癒やすべきだという点と、未来志向的な韓日関係などを総合的に考慮して対応策をまとめる」とした。

 一方で、「このような状況で不必要な葛藤と反目を引き起こすことは、全く問題解決の助けにならない。冷静に慎重に状況を管理する必要がある」とも訴え、間接的に日本の対応を批判した。(竹下由佳、上地兼太郎、ソウル=牧野愛博)