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【まとめて読む】患者を生きる・食べる「大石静と腸閉塞」

 北川景子さん主演のドラマ「家売るオンナの逆襲」の脚本を担当する大石静(おおいししずか)さん(67)は約10年前、腸閉塞で入退院を繰り返しました。話題作「セカンドバージン」の脚本はほぼ病室で書きました。食生活に細心の注意を払っても何度も再発。劇的な改善は、ある手術がきっかけでした。

おおいし・しずか
1951年、東京都生まれ。日本女子大学文学部国文学科卒業後、86年にテレビドラマの脚本家としてデビュー。向田邦子賞と橋田賞を受賞したNHK連続テレビ小説「ふたりっ子」のほか、「長男の嫁」、「アフリカの夜」、「功名が辻」、「セカンドバージン」、「家売るオンナ」、「トットちゃん!」など話題作多数。

吐き気と腹痛、ついに入院

 大石静さん(67)は、立ったまま脚本を書く。足のむくみを防ぐために加圧のハイソックスをはき、自宅の書斎で高さを上下できるデスクに置いたパソコンに向かう。集中できるし眠くならないからだ。

 2018年秋は、2本の連続ドラマの脚本を並行して執筆した。戸田恵梨香(とだえりか)さん(30)が若年性アルツハイマー患者を演じて好評を博した、10月~12月放送の「大恋愛」(TBS系)と、ヒット作の続編として1月9日に放送が始まる北川景子(きたがわけいこ)さん(32)主演の「家売るオンナの逆襲」(日本テレビ系)だ。放送期間が3カ月の連続ドラマだと、書き上げるのに半年ほどかかる。

 締め切りが迫る日々。自宅での食事は、冷蔵庫をのぞいてあり合わせの材料で炒め物を作ったり、気分転換に作り置きしておいた野菜スープや冷製スープを飲んだり。時間が無いと、キッチンで立ったまま卵かけご飯をかきこむだけのこともある。

 「好きな時に好きなものを食べる」。脚本家として多忙を極めるようになってからはそんな食生活を送ってきた。会食や打ち合わせが多い仕事柄、よく外食もする。フランス料理もすしもお酒も甘い物も好きだ。体重にだけは注意し、50キロを超えそうになったら少しダイエットしてきた。

 元舞台監督の夫、高橋正篤(たかはしまさあつ)さん(75)とも、互いに好きなものを好きな時間に食べることにしている。食材が重ならないよう、冷蔵庫におのおの買いたいものを記した紙を貼ってリスト化。時間がある方が買う。

 そんな大石さんの記す食材が、ヨーグルトや卵、豆腐、鶏のササミばかりの時期があった。09年はじめからの約2年半のことだ。

 前年の秋、朝から何となく腹部が張り、食欲がわかなかった。夜、会食に出たが、一口食べて気分が悪くなり、途中で退席した。帰宅する車中で激しく吐いた。腹部がねじれるように痛む。自宅で一晩休むと落ち着いたが、その後も何度か同じ症状が出た。

 09年2月、自宅で寝ていられないほど、激しい吐き気と腹痛に襲われた。東京都内の民間病院の消化器外科を受診。CT検査などを受けて「腸閉塞(へいそく)」と診断された。腸が詰まって食べ物が通らなくなる病気だ。「すぐに入院して下さい」と言われた。

 担当医は、腸閉塞の原因は、その約10年前に大石さんが受けた子宮摘出手術かもしれない、と説明した。腹部の臓器の手術では腹壁に傷がつく。傷の修復を促すたんぱく質が出て、そのために小腸が腹壁や小腸の別の部位にくっつき、何かの拍子に癒着した部分を中心に腸がねじれるなどして、ふさがってしまったのではないかというのだ。

 「開腹手術で腸の癒着をはがす治療法もありますが、新たに癒着が起こる可能性があり、勧められない。症状を取り除く治療をして、なるべく腸閉塞が起きないよう、折り合いをつけていくしかない」。そう言われた。

 鼻からチューブを入れて腸に詰まっている食物などを取り除き、点滴を受けながら絶食し、水も飲まずに腸が動き出すのを待った。約1カ月入院した。

 入院したことは、必要最小限の人にしか明かさなかった。30代半ばでドラマの脚本を書き始め、これまで幾度も病気と向き合ってきていた。40代前半からはめまいや不眠などの更年期障害に悩まされた。NHK朝の連続テレビ小説「ふたりっ子」(1996~97年放送)を執筆中も、突然高熱が出て緊急入院した。

 40代半ばから更年期障害の治療で女性ホルモン補充療法を始めたが、その影響で良性腫瘍(しゅよう)の一種、子宮筋腫が大きくなった。担当の産婦人科医から、補充療法を中断するか、子宮筋腫を切ったらどうかと言われた。

 大石さんは補充療法は続けたかった。以前、副作用が心配でやめたら、体から力が抜けたように元気が無くなり、「仕事に差し障る」と実感したからだ。子宮摘出手術の後も、ドラマの脚本の筆を止めることはなかった。

 ただ、その手術が腸閉塞という新たな病気の原因になるとは、思いもよらなかった。

 09年春に退院してからは、細心の注意を払って消化のよいものを食べるように心がけた。それでも激しい吐き気や腹痛を伴う腸閉塞は何度も起き、入退院を繰り返した。

 年齢差のある男女の激しい恋を描いて反響を呼んだ、鈴木京香(すずききょうか)さん(50)主演の「セカンドバージン」(NHK、10年秋放送)。その脚本はほとんど病室で書き上げた。

 だが、どんなに具合が悪くても外での仕事の際は元気に振る舞った。作品の舞台として登場するシンガポールにも、下見で足を運んだ。「少しでも体調が悪そうな様子を見せたら、次の仕事はもう来ないと思っています。私の代わりに脚本を書きたい人はいくらでもいますから」。視聴率の重圧と向き合いながら、第一線を走り続けてきた矜持(きょうじ)だった。

個室を希望、点滴は左腕

 脚本家の大石静さん(67)は、腸がふさがる「腸閉塞(へいそく)」のため東京都内の民間病院に入退院を繰り返した。代表作の一つで2010年秋に放送された、鈴木京香さん(50)主演の「セカンドバージン」(NHK)の脚本は、ほとんど病室で書いた。

 腸閉塞での最初の入院は09年2月。入院先の消化器外科医に、「入院期間は腸の回復状況によるので予想できない」と言われた。

 まず考えたのは当時抱えていた連続ドラマのことだ。1本のドラマに出演者やスタッフら約百人がかかわっていた。脚本が間に合わなければ迷惑がかかる。しかも脚本家同士の競争は激しい。「一度でも『使えない』と思われたら、二度と仕事の依頼は来ない」

 入院が長びいても病室で仕事が…

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