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【アピタル+】患者を生きる・食べる(腸閉塞の仕組みや治療)

 腸閉塞(ちょうへいそく)が起こる仕組みや治療について、聖マリアンナ医科大東横病院(川崎市)の古畑智久教授(54)=消化器・一般外科=に聞きました。

――腸閉塞とはどのような症状ですか。

 腸がふさがって食物などが通らなくなります。詰まった部分に食物や胃液などの消化液がたまって腹部がはり、腹痛や吐き気を伴うことが多いです。

――原因は何ですか?

 色々あります。多いのは、子宮など腹部にある臓器の手術の後に起きる癒着です。手術で腹壁などに傷がつくとその周囲から傷口を修復しようとするたんぱく質が分泌されます。そのたんぱく質により、腸が、傷口や腹壁、腸の他の部分に癒着してしまいます。腸がそこを中心に折れたりねじれたりすると腸がふさがってしまい、腸閉塞になります。

 ほかには、足の付け根の部分に腸が飛び出す「鼠径(そけい)ヘルニア」や、大腸がんが原因のことや、薬の包み紙といった異物が腸に詰まってしまって起きることもあります。

――患者はどれぐらいいますか?

 厚生労働省の2014年の患者調査では、人口千人あたり9.6人、つまり人口の1%弱いると推計されています。

――どのような治療をしますか。

 腸が強くねじれるなどして血液が流れなくなる「血流障害」が起きた場合と、起きていない場合で、対応が異なってきます。

放置すれば死に至る恐れも

――血流障害がある場合はどうするのですか。

 原因にかかわらず一刻も早い治療が必要です。放置すると、血の流れていない腸の部分が壊死(えし)して穴があき、腸内細菌が漏れて腹膜炎が起きることがあります。さらに腸内細菌が血管内に入って全身に回ると、全身の感染症『敗血症』になって死に至る恐れもあります。

 このため、すぐに手術をして血流が再開するようにします。ねじれが原因ならねじれをとります。すでに腸の一部が壊死していたら、そこを切除し、腸内細菌が漏れ出ないようにします。

――血流障害があるかどうかは患者さんが自分で判断できるのですか。

 突然発生する、激しい腹痛が持続するのが特徴ですが、実際にはご自分で判断するのは難しいことが多いと思います。CTなどで検査すれば、血流障害があるかないかはかなり区別がつくようになってきました。

――血流障害が無い場合はどのように治療しますか。

 鼻や口から入れたチューブで腸に詰まった食物などを取り除いて腸内の圧力を下げ、食事や水分の摂取を控えます。腸閉塞が起きている部分の腸の内腔(ないくう)は、むくんで腫れていることが多く、余計に内部が狭くなっています。その腫れがひき、腸が再び動き出すのを待ちます。

 その間は、点滴で水分や栄養を補います。とくに水分の補給が大切です。腸閉塞で病院に来る人は、それまでに飲食をかなり我慢してきているのでだいたい水分不足の状態になっており、そのままでは急性腎不全になる恐れがあるからです。ただし、体内に急に水分を入れると心臓に負担がかかってしまいますから、ゆっくりと水分を補給していきます。

なぜ再発、防止は

――腸閉塞がいったん治まった後は、どのようにすれば再発が防げますか。

 再発防止には、腸の負担をなるべく減らし、詰まりやすいものをとらないように、繊維分が多い野菜や脂肪分の多い肉など消化が悪い食品を避けます。どうしてもキノコや海藻など繊維分の多い食品が食べたい時には、細かく刻んで物理的に腸内でひっかからないように注意します。

 あとは、一般的に言われている健康にいい生活、つまり適度に体を動かし、休息をよくとるといい、と言われますが、それでも再発してしまう人はいます。

――なぜ再発するのでしょうか。

 よくわかっていません。

――再発を繰り返す場合は、どうすればいいのでしょうか。

 患者さん一人ひとりとよく話し合って治療方針を決めます。血流障害が起きない限りは、すぐに命にかかわるわけではないので手術は嫌だ、という方もいらっしゃいますし、腸閉塞の再発におびえて暮らすよりは、体に負担がかかったとしても手術を受けてみたい、という方もいらっしゃいます。考え方は個人によって大きく異なり、正解はありません。

 手術で癒着した部分をはがすとしても、最近は、いきなり大きく開腹手術をすることは少なくなってきました。外からの検査では正確な癒着の部位や程度がわからないので、まずは小さく切って腹腔鏡を腹部に入れ、癒着の状態を正確に把握し、そのまま腹腔鏡で手術ができそうならするし、癒着部位が広かったり、癒着の程度が激しかったりして腹腔鏡では難しいと判断したら、開腹手術に切り替えるようになってきています。

 ◇ご意見・体験は、氏名と連絡先を明記のうえ、iryo-k@asahi.comメールするへお寄せください。

<アピタル:患者を生きる・食べる>

http://www.asahi.com/apital/special/ikiru/(聞き手・大岩ゆり)