【動画】奈良・西大寺の大茶盛式。大きな茶わんや所作は80年前と比べて…=井手さゆり撮影
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 巨大な茶わんで茶を回し飲む奈良・西大寺の伝統行事「大茶盛式(おおちゃもりしき)」の1941年ごろの様子が、朝日新聞社が子供向けに作製した映像ニュース「アサヒホームグラフ」に残っていた。映像を見た寺幹部は「当時の様子は写真でしか伝わっていない。映像で見られるのは貴重だ」と話していた。

 今年も1月15日にあった大茶盛式。午前10時からの第1席には、華やかな着物姿の女性ら約50人が集まった。僧侶が点(た)てた茶が入った直径35センチほどの茶わんを、両隣の人に支えてもらって飲む女性も。

 初めて参加した京都府精華町の主婦、柴田恵子さん(45)は「家族みんなが健康で過ごせる一年になればと思います。予想以上に茶わんが重くてびっくりしましたが、おいしかったです」と話した。

 大茶盛式は鎌倉時代に寺を復興した叡尊(えいそん)上人が寺の鎮守社(ちんじゅしゃ)の八幡(はちまん)神社に茶を献上し、残りを参拝者にふるまったのが由来とされ、約800年続くという。参加者は茶を回し飲み、無病息災を願う。

 今回見つかった映像は2分15秒ほどで、「西大寺(さいだいぢ)の大茶(おほちや)の湯(ゆ)」と題されていた。僧侶に先導され、「西大寺大茶盛式場」に晴れ着の女性たちが入っていくところから始まる。

【動画】アサヒホームグラフ「西大寺の大茶の湯」。1941年ごろ公開

 続いて茶道具が映り、境内にある愛染堂(あいぜんどう)の客殿で僧侶が茶を点て、女性たちが回し飲む姿が記録されている。茶わんは「重さが8キロ、2貫目余り。水を一杯いれると8升と言いますから、15リットルも入ろうという」とナレーションで説明される。

 大茶盛式をよく知る寺の主事・中野祥圓(しょうえん)さん(61)は「映っている人と衣装を除けば、道具から所作まで今とほとんど変わらない」と話す。主な会場は1980年ごろに大茶盛式用に建てられた光明殿(こうみょうでん)に移されたが、台子(だいす)や水指(みずさし)といった茶道具は現在でも同じ物を使っているという。

 「800年の伝統があるので、80年ぐらいでは変わらないのも当たり前かも。映像を見て、今後も伝統行事として続けていくべきだという意識を持ちました」と中野さん。

 寺の塔頭(たっちゅう)・清浄院(しょうじょういん)住職で種智院大教授(日本仏教史)の佐伯俊源さん(53)によると、映像には佐伯さんの祖父で副住職を務めた宝龍(ほうりゅう)さん(故人)や、その師で寺の第66代長老・悟龍(ごりゅう)さん(同)の姿も映っていた。

 佐伯さんは「写真で見慣れた顔が出てきたので親近感を覚えました。動いているのを見たのは初めて。当時の様子を映像で伝える貴重な資料ですね」と話していた。(根本晃)

1940アーカイブス、順次公開

 アサヒホームグラフ(当初はアサヒコドモグラフ)は朝日新聞社が1938~43年に制作した子ども向けニュース。映画館などで上映され、フィルムは戦後、連合国軍総司令部(GHQ)に接収されるなどして米国に渡った。その後返還された32回分が、国立映画アーカイブ(旧・東京国立近代美術館フィルムセンター)に所蔵されている。朝日新聞が数年前から調査・整理を進めてきた。

 朝日新聞では、アーカイブ映像企画「1940アーカイブス~あのころ日本は~」として、記者が現地を訪ね、当時と今の光景を比較しながら紹介します。

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 映像は朝日新聞フォトアーカイブの特集ページ(https://photoarchives.asahi.com/special/?id=20181129121502661208別ウインドウで開きます)でご覧になれます。

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