[PR]

(15日、大相撲初場所3日目)

 土俵で確かに相撲は取っている。だが、稀勢の里は迷路の中で立ちすくんでいるかのようだった。エネルギーを体に充満させて圧力を高め、一気に発散するのが相撲の攻防。稀勢の里は、そうした力士のはつらつさを失っている。

 頭から当たった。そのあとがいけない。ただ漫然と、栃煌山に十分の両差しを許した。これを最も警戒していたはずなのに。瞬く間に敗勢。懐に入られて、のけぞった。これではどちらが横綱か分からない。

 昨年の九州場所4日目。栃煌山には土俵際で逆転され、その黒星を契機に休場に追い込まれた。しかも同学年。奮い立つ材料はあったはずだ。「やはり意識する。気合が入った」といったのは栃煌山。相手は普通に体と心が直結していた。

 「稀勢の里という横綱の相撲になっていない。自分でも分からなくなっているのでは」。こう見たのは芝田山親方(元横綱大乃国)。「おれは『土俵で何をやっているか分かりません』と師匠にいったのが、引退の決め手だった」

 押しから四つになり、左からの攻め。これでのし上がった稀勢の里にとって、やはり一昨年春場所の大けがで左の威力を欠いたのが決定的だった。再び自分の相撲をと、もがくうちに、えらい深みにはまってしまった。

 横綱の連敗記録を更新し、不戦敗を除いた8連敗も単独最多に。励ましと限界論が渦巻く中、敗れた横綱は土俵だまりで目を伏せていた。迷路に出口はあるのか。(隈部康弘)