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 母子感染とは、細菌やウイルスなどがお母さんから赤ちゃんに感染することです。妊娠前からその細菌やウイルスを持っているお母さんもいれば、妊娠中に感染するお母さんもいます。今回はその中でもクラミジア、風疹、梅毒についてお話しします。

 クラミジアは最も多い性感染症の一つで、妊婦さんの約5%が感染しています。主な症状はおりものの増加や腹痛、性器出血などですが、症状がない場合が多く、感染に気づかず放置されることが多いようです。クラミジアの感染は子宮頸管(けいかん)(子宮の出口)に起こるため、子宮の中にも炎症が広がり、赤ちゃんを包む膜にまで達すると、流産や早産の原因になります。

 子宮内の赤ちゃんへの影響はほとんどないとされていますが、分娩(ぶんべん)時にお産の通り道で感染すると、新生児結膜炎、咽頭(いんとう)炎、肺炎が引き起こされることが知られています。その予防のために妊娠初期から遅くとも妊娠30週までには子宮頸管のクラミジア検査を行います。クラミジアとわかったら抗生剤による治療が必要になりますが、適切な治療によってほとんどが治癒します。また、パートナーにも検査、治療を受けることをお勧めしています。パートナーからの再感染を防止するためです。

 風疹は小児期に多くかかる病気で、感染すると2~3週間後に発熱、発疹、リンパ節の腫れが出現します。妊娠初期から妊娠20週ごろまでの時期にお母さんが風疹にかかると、赤ちゃんが先天性風疹症候群になる可能性があります。先天性風疹症候群は、赤ちゃんが生まれつき白内障や緑内障などの目の病気、難聴などの耳の病気、心臓の病気になる感染症です。

 わが国では2004年、12~14の風疹の大流行により多数の先天性風疹症候群の赤ちゃんが生まれました。昨年も大流行し、国立感染症研究所の感染症疫学センターの報告によれば、患者数は2700人を超えました。08年の全数届け出開始以降では、13年に次いで2番目の多さです。現時点で先天性風疹症候群の報告はありません。

 ほとんどのお母さんは風疹の予防接種を受けていて抗体を持っているので特に心配はありませんが、妊娠初期に行う風疹抗体検査で抗体を持っていない場合や抗体が少ない場合、気づかずに感染することがありますので注意が必要です。

 そのような妊婦さんには、出産後に風疹ワクチンの予防接種をお勧めしています。また妊婦さんへの感染を予防するために子どもを望むカップル、抗体を持っていない、もしくは抗体が少ない妊婦さんのパートナーや子ども、同居家族にも早期の抗体検査やワクチン接種が望まれます。

 梅毒は近年感染者が増加しており、妊婦さんや赤ちゃんへの感染が懸念されています。梅毒の多くは性行為によって感染し、無症状の場合が多いですが、初期には皮膚の硬いしこりや潰瘍(かいよう)、足の付け根のリンパ節の腫れなどが見られます。感染後3カ月すると手のひらや足の裏、体全体にうっすらと赤い発疹が出現します。さらに長期間治療しないと皮膚や筋肉、骨などにゴムのような腫瘍(しゅよう)ができたり、神経症状や心臓血管の症状が現れたりすることがあります。

 お母さんが梅毒に感染している場合、胎盤を通じて赤ちゃんに梅毒が感染することがあります。その場合、流産や死産、胎児発育不全(赤ちゃんの発育が悪いこと)を起こしやすく、先天梅毒という、皮膚や骨の異常、知能や運動の異常が赤ちゃんに起こることがあります。

 わが国では年間5例程度の先天梅毒の報告があります。妊娠初期の検査で感染がわかった場合、早期に治療を始めれば赤ちゃんへの感染予防の効果が高いです。パートナーも検査、治療を行う必要があります。

 今回お話しした感染症の検査は妊娠初期から中期に行うものですから、きちんと妊婦健診を受けてください。感染が判明した場合、早期の治療によって赤ちゃんへの感染を最小限に抑えることができます。

<アピタル:弘前大学企画・今こそ知りたい! 感染症の予防と治療>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/hirosaki/(弘前大学大学院医学研究科産科婦人科学講座助教 伊東 麻美)