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 「だけ」ではなく、「も」。日本アイスホッケー連盟が、競技普及へ視点を変えた取り組みを始めている。幼いときから一つの競技だけに絞らず、複数競技を経験し、その選択肢としてアイスホッケーも入れてもらう「二刀流」の提案だ。少子化時代の普及は、すべてのスポーツで避けて通れない課題だが、打開策となるか。

 「日本のアイスホッケーは今、生きるか死ぬかです。子どものときからの育成モデル確立が急務ですが、大上段で『ホッケーをやれ』という今までのスタイルは通用しない」。「二刀流」の普及策を発案した弁護士で、日本アイスホッケー連盟企画委員会の水野雄太委員は力説する。

 連盟の統計では、長野冬季五輪があった1998年度前後には2万8千人を超えていた競技人口が、2015年度に1万9千人を割った。昨年12月にはアジアリーグで優勝4度の強豪・日本製紙が今季限りでの廃部を発表するなど、アイスホッケーは厳しい状況に置かれている。

 発案するきっかけの一つとなったのは、昨年相次いだ指導者の暴力やパワーハラスメントなど、スポーツ界の不祥事だ。「日本スポーツの閉鎖性も問題の土壌にあったと思う。一つのことをやると、『私にはこれしかない』という雰囲気になり、選手も体罰やパワハラを受け入れてしまう」と水野委員は考える。

 北米では、複数競技を同時に経験する「マルチスポーツ」は一般的で、トップレベルの選手もいる。米オクラホマ大のカイラー・マレー(21)は昨年、大リーグ・アスレチックスからドラフト1巡目(全体9位)指名を受けるとともに、米大学フットボールの年間最優秀選手に贈られる18年のハイズマン賞にも輝いた。

 カナダは、包括的な運動能力発達のために10代前半までは複数競技の経験を推奨している。研究する東京理大経営学部の新井彬子助教は、「専門化か多様化は長年の議論だが、バスケットボールのスクリーンアウトがサッカーのゴール前の位置取りに応用できるなど、複数のスポーツで総合的に基礎運動能力を高めることができる」と話す。

 同連盟は11日、活動の第1段として、夏と冬で違うスポーツをする土壌がある北海道帯広市でシンポジウムを開催。中学生までアイスホッケーを経験していた7人制ラグビー女子日本代表の桑井亜乃や、プロ野球・日本ハムの杉浦稔大も出席した。「小さいころは様々なスポーツをして、その中の一つとしてアイスホッケーも考えてもらえれば。子どもの取り合いではなく、ウィンウィンの関係を目指したい」と水野委員は、各競技団体の連携を呼びかけている。(山下弘展)