【動画】地域を161年見守り続けた地蔵尊=吉田真梨撮影
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 仏像が集まる一帯の中心、石倉町延命地蔵尊(富山市石倉町)までは富山駅から車で10分ほど。目立つ場所ではないが、転勤で富山に来た記者にとってもお気に入りの場所の一つだ。

 初めてこの場所を知ったのは2年前。近くで食事をした帰りに、知人が「わき水が出ている場所があるよ」と連れてきてくれたのがきっかけだった。その時は、一帯に他にも仏像があるとは知らず、「こんな街中でおいしい水が飲めるとは」と驚いた。休日に、5リットルのポリタンクを持って時折水をくみにくるようになった。

 川沿いは、春は桜、夏は新緑、秋は紅葉で美しい。水をくむだけでなく、自然を楽しもうと散歩をするようになって、さらに別の魅力に気づいた。

 それは、人の息づかいが感じられることだった。どのお地蔵さんにもいつもきれいな花が供えられ、線香やろうそくが絶えることはない。地域の人たちに大事にされていることが分かった。線香の香りがほのかに漂ってくると、なぜだかほっとする。

 石倉町延命地蔵尊は、町内の10人ほどで作る奉賛会が掃除など手入れをして守っている。会長の太田行雄さん(73)は、出勤前、仕事終わり、夜と1日に3回も掃除しに来るという。他のメンバーらも、手が空いた時にはやって来る。こうした活動が評価され、昨秋、奉賛会は緑綬褒章を受章した。

 そこまで熱心に活動する理由を太田さんは「町内への恩返しの気持ち」と話す。子どもが小さい頃、出張が多い太田さんに代わって町内の人が遊びに連れて行ってくれたという。

 ただ、奉賛会のメンバーは高齢化し、活動を続ける人が少なくなってきて、後継者の問題が深刻という。他の町内では仏像の手入れをしてきた団体が解散したところもある。また、仏像の由来や、先人の思いがうまく受け継がれず、掃除などの作業を負担と思う人もいるという。

 石倉町では地域の子どもたちに地蔵尊に親しんでもらおうと、言い伝えを紙芝居にしたり、小学校の課外授業で訪れてもらったりしている。

 なぜ、今まで大切に守られてきたのか。仏像を守る活動と共に、その「記憶」も一緒に伝えていってほしいと思う。(吉田真梨)

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