武田薬品工業によるアイルランドの製薬大手シャイアーの買収が今月完了した。買収総額は約6・2兆円。創業230年を超す老舗は、日本発のメガファーマ(巨大製薬会社)へと姿を変える。
武田薬品工業が今月買収したシャイアーの創業は1986年。英ハンプシャー州で数人の起業家がつくった「街の一角にある小さな会社」(広報)だった。当初はアルツハイマー型認知症や末期の腎不全などの治療薬の開発に力を入れた。
90年代以降、拡大路線にかじを切り、約20年間で20社以上を次々と買収。血友病など患者数は少ないものの利益率が高い希少疾患の治療薬に強みを持つ。「人工的に合成したような会社で、文化・伝統が乏しい」(製薬アナリスト)との声もある。
08年にアイルランドに本社を移転。今では約2万3千人の社員を抱え、100カ国以上で約40種類の薬を販売する。販売の承認待ちを含めて約30の新薬候補を持つ。バイオ医薬品の開発基盤もある。17年の売上高は約150億ドル(約1兆6200億円)で、世界の製薬業界で20位前後の武田と同規模。買収により武田は売上高トップ10圏内に浮上し、メガファーマの仲間入りをする。武田は買収後に年間4千億円以上を研究開発に投資する計画で、バイオ創薬での出遅れを挽回(ばんかい)できる可能性も秘める。初の外国人社長として14年から武田を率いるクリストフ・ウェバー氏は「研究開発型のバイオ医薬品のリーディングカンパニーを目指す」と自信をみせる。
ただ、製薬業界で大型買収は下火になりつつある。世界で売上高首位を争うメガファーマの米ファイザーが多用して「ファイザーモデル」と呼ばれ、00年代に広まった戦略だが、一時的に収益が上向いても、中長期で稼ぐ力を高める新薬を生み出せないケースが少なくない。近年は新薬のタネを持つベンチャー企業などを買収する戦略が主流だ。
シャイアーの買収も短期的に…