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 国連が2015年に採択した「持続可能な開発目標」(SDGs〈エスディージーズ〉)の基盤となっているのは人権です。17分野の目標すべての実現には、人権の尊重が欠かせないからです。一方、企業の活動ではこれまで人権の侵害が問題になる例がありました。特に、働きがいのある人間らしい雇用(目標8)や、人や国の不平等をなくすこと(目標10)、責任ある生産と消費(目標12)をめざすため、企業はどうすべきか。キャスターの国谷裕子さんと取材しました。

 炭素繊維や自動車部品に使われる樹脂などを製造する大手化学メーカーの帝人は昨年、グループの主要4社とともに国内外の取引先約800社にアンケートを送った。帝人グループの「CSR調達ガイドライン」を改定したことを受け、ガイドラインが守られているかを調べ、取り組みをうながすねらいだ。

 改定では人権を守る項目を充実させた。労働条件や外国人労働者の扱いなどについて「してはいけないこと」「すべきこと」が並ぶ。「サプライチェーン」(原材料の調達から製造、流通、販売にいたる製品供給のつながり)全体で、人権侵害をふせぐためだ。

 グループで最初に取り組んだのは、繊維商社の帝人フロンティア(大阪市)。2012年から始め、海外の自社工場や取引先企業を訪問して現場の安全衛生や労務管理などの問題を見つけて改善してきた。14年からは毎年、縫製工場があるベトナムで環境・労働セミナーを開き、本社では社員研修にも力を入れる。

 国内では外国人技能実習生の待遇が最大の問題だ。昨年、実習生がいる取引先に訪問を始めた。タイムカードや給与明細の閲覧などを渋る企業もあるが、「問題があれば一緒に改善していく。取引停止はしない」と伝え、対話を重ねる。

 帝人グループの調査を手伝う国際的な就労規格の監査員、和田征樹さんは「正しくやることで人材を確保でき、ビジネス環境も良くなる。取り組んだ企業をほめる仕組みがあると有効だ」と話す。

サッカーボールを子どもが手縫い

 帝人フロンティアが取り組みを始めたきっかけは、生地を納めるスポーツ用品ブランドの要請だった。

 1990年代に入ってグローバル化が進み、先進国の企業は安い労働力を求めて途上国での生産を増やしてきた。その陰で、現地で引き起こされる人権侵害が問題になってきた。

 97年には、米国の大手スポーツ用品ブランド「ナイキ」の製品を作る東南アジアの工場で、児童を働かせたり、劣悪な環境で長時間働かせたりしていたことが明らかになり、不買運動に発展した。サッカーボールをパキスタンやインドの子どもたちが手縫いする問題は、02年の日韓ワールドカップを前に注目された。

 こうした問題を受け、国連は11年、「ビジネスと人権に関する指導原則」をつくり、人権尊重は企業の責任であるとした。

 しかし、その後もバングラデシュで12年、縫製工場の火災によって、夜勤中だった100人以上が死亡した。13年には五つの縫製工場が入っていたビルが倒壊し、千人を超す死者が出た。いずれも有名ブランドに製品を納めていた。

 度重なる人権侵害を受け、海外では法規制が広がる。英国では15年に現代奴隷法が成立し、一定規模の企業には児童労働などに関係しないための対策を公表するよう義務づけた。フランスはサプライチェーンで人権や環境に問題がないかの調査を義務づけ、米国も規制を設けている。

 人権を損なえば不買運動が起き…

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