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 男女比が極端に偏っている象徴である議会を変えようという動きが昨年、日本の政界で始まった。それに先んじて「男女均等」への取り組みを始めたのが、欧米を中心とする映画界だ。映画と政治。抱える問題は驚くほど似ている。

 「女性は子育てや夫の世話を期待されている。でも私たちは満足できる人生を見つけなくてはならない」

 6日(日本時間7日)に開かれた米ゴールデングローブ賞授賞式。「天才作家の妻 40年目の真実」(26日公開)でドラマ部門の主演女優賞をとったグレン・クローズさんが、壇上から女性たちに呼びかけた。

 「夢を追いかけましょう。『私はできる。許される』と言うべきです」

 映画では、ノーベル文学賞受賞が決まった世界的な作家の夫を献身的に支える妻を演じた。実際に小説を書いたのは妻で、男性社会の文壇で才能を評価されなかった悔しさがはじける。実社会と重ねた力強いクローズさんのスピーチに、満場の拍手が送られた。

 映画界の女性たちは一昨年、米ハリウッドを震源にセクハラ被害の告発が広がった「#MeToo(私も)」運動をきっかけに立ち上がった。昨年の授賞式で俳優たちは抗議を込め、黒いドレスやスーツを着た。そして今年の授賞式に参加した俳優たちの多くは「TIME’S UP×2(もう終わりだ、2年目)」と書かれたリボンを身につけ、性差別やセクハラ撲滅に向けて具体的な行動を続ける姿勢を示した。

 そしていまは、映画界の構造を根本から変えようと、「50/50(フィフティーフィフティー)by2020」のスローガンが掲げられている。映画祭の選考委員や映画会社で意思決定に関わる幹部の数、俳優やスタッフの賃金・雇用機会など、あらゆる分野で男女格差をなくすことで多様な作品を生み出し、ひいては社会を変えることにつなげる、という訴えだ。

 助演女優賞をとった黒人のレジーナ・キングさんは「今後2年にわたり、私がプロデュースする作品の現場では、女性の比率を50%にする」とスピーチした。

 昨年5月にフランスで開かれたカンヌ国際映画祭。最高賞パルムドールを競う長編コンペ部門の審査員長で俳優のケイト・ブランシェットさんら82人の女性映画人がメイン会場前のレッドカーペットに集まり、抗議した。

 「82」は、カンヌ国際映画祭が始まった1946年以降のコンペ部門で上映された女性監督作品の総数。男性監督作は1645本で、その5%にすぎない。

 これを受け、カンヌ側は映画祭の作品選考に関わる男女比などを明らかにし、2020年までに同等にすると表明。ベネチアやトロントといった有名映画祭も後に続いている。

女性少ない分野には「何らかの壁」

 映画界で注目を集めているのが、男女平等の先進国であるスウェーデンの取り組みだ。国会議員の46%、閣僚23人のうち12人を女性が占め、政界では男女均等が実現している。世界経済フォーラム(WEF)が発表した18年の男女格差(ジェンダーギャップ)報告書では、男女平等度で149カ国中第3位だ。

 だが、徒弟制度の残る演劇や映画界などの分野では、女性比率は低いままだった。

 11年にスウェーデン映画協会の最高経営責任者(CEO)に就任したアンナ・サーナーさんは、国の助成金が支給される作品の監督や脚本家、プロデューサーの男女比を同等にする目標を明確にした。女性人材の育成制度やネットワークの充実にも力を入れた。その結果、女性枠を割り当てることなく男女均等を達成。07~09年に助成が決まった長編のうち女性監督作は26%だったが、16~18年は65%になった。サーナーさんは「国際映画祭での入選作が増えて、質の向上にもつながった」と話す。

 スウェーデン在住のコンサルタント、三瓶(さんぺい)恵子さんは「米国で#MeTooが始まった直後、スウェーデンでもそうした分野で働く女性たちが長年にわたる性被害を告発した」と解説する。男女平等の先進国でも映画界に波及するのは最近になってからだ。

 日本では、昨年5月に施行された候補者男女均等法で、国と地方の議会選挙で男女の候補者数をできる限り均等にするよう政党に努力を求めている。その背景には、衆院議員の女性比率が10・1%、女性閣僚が1人のみという状況がある。

 日本の映画界も同様だ。主な大学や専門学校で映画を学ぶ学生のうち、女性の割合はここ20年間、4割ほどで推移。新人の登竜門となる映画祭では女性監督作の入選も珍しくなくなっている。山戸結希監督(29)が若手女性監督14人と作ったオムニバス映画「21世紀の女の子」(2月公開)の監督公募には全国から200人もの応募があり、やる気や能力で女性が見劣りする時代ではない。

 だが、国の助成金を受けた実写映画のうち女性監督作は約12%。日本の大手映画会社4社がこの20年間に制作・配給した実写の邦画で、公開された女性監督作の割合は約3%にとどまる。予算が大きいほど、女性監督に声がかからないという実態が浮かぶ。

 候補者男女均等法の立案を支えた上智大の三浦まり教授(政治学)は「女性の少ない分野には何らかの壁がある。業界ごとに壁を壊していくのが大事」と主張。その上で「男女同数が重要だという法の理念が『日本社会に必要だ』と思う人をもっと増やすこと。日本にどう定着するかは、有権者が政党に働きかけたり、女性候補者を支援したりすることにかかっている」と指摘する。

 男女同数の理念は映画界や政界だけではなく、職場やPTA、育児・介護現場など身近な問題にもあてはまる。男女の数に偏りがある分野に性別による機会の不平等はないのか。

 法施行後、初めての大型選挙である統一地方選や参院選が続く今年。女性の候補者が増えることで政界が変わり、男女の偏りのない社会の実現に向かう一歩となるかもしれない。

■サーナーさんに聞く、スウェー…

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