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 厚生労働省は18日、2019年度の公的年金の支給額を0・1%引き上げると発表した。年金額を抑える「マクロ経済スライド」が4年ぶりに実施されるため、支給額の伸びは物価や賃金の伸びより低く抑えられる。実施は04年に制度を導入してから2回目になる。少子高齢化の中で将来の年金水準を維持するというスライドの機能は、十分働いていない。

 国民年金の支給額は4月分(支給は6月)から、満額を受け取る人は月6万5008円(今年度比67円増)。厚生年金は、平均的な収入で40年間働いたサラリーマンと専業主婦のモデル世帯(2人分)で月22万1504円(同227円増)となる。

 年金額は毎年、物価や賃金の動きに応じて見直される。今回の改定に使った賃金上昇率は0・6%だが、物価や賃金の伸びよりも年金額の伸びを抑えるマクロ経済スライドの実施に伴い0・1%増にとどまった。

 マクロ経済スライドは少子高齢化に対応するため、04年に導入された。労働人口の減少と平均余命の伸びに応じて自動的に年金水準を下げる仕組みだ。一定の経済成長を前提にした政府の将来見通しによれば、マクロ経済スライドが働くことで、厚生年金のモデル世帯の年金額は43年ごろには14年度より2割ほど低くなるが、年金財政は安定する。

 だが、デフレ時には発動できないルールがあり、これまでの実施は15年度の1回だけ。会計検査院は昨年、マクロ経済スライドが毎年実施されていれば、16年度までに国庫負担を計約3・3兆円抑えられた可能性があると指摘した。実施が遅れると、将来世代の年金水準はさらに低くなる恐れがある。

 抑制強化を目的に、デフレ時に抑制できなかった分をためておき、実施できる状況になった時に上乗せして差し引く新ルールも今回初めて適用された。ただ、このルールでも、デフレが続けば年金額を抑えられない状況は変わらない。

 一方、個々の高齢者の暮らしを見れば、マクロ経済スライドの実施で家計は厳しさを増す。特に国民年金は、将来的に現役の平均手取りの1割ほどまで落ち込むほど深刻だが、こうした高齢者の生活をどう支えるかの議論は遅れている。(中村靖三郎)