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 パワハラ問題などの不祥事防止が叫ばれる日本のスポーツ界。根本的な問題は何なのか。かつて企業スポーツやプロ野球球団の運営管理に携わり、米国の事情にも詳しいスポーツ・アドミニストレーター(運営管理者)の河田弘道氏(71)に聞いた。

 ――レスリングや、体操のパワハラ問題。根本的に何が問題ですか?

 「競技団体役員の雇用制度です。五輪などでメダルをとった人が重鎮になりますが、メダルはその種目での評価であり、それ以外の分野はゼロからのスタートのはずです。また、役員の多くが他に本業を持ち、ボランティアという認識で、責任の所在が問えないシステムになっています。実はここは無責任体質の日本人が一番改善したくないことでしょう」

 ――米国ではどんな人が競技団体をリードするのですか?

 「競技スポーツに関わる経営、編成、運営管理の専門部署を束ねるスポーツ・アドミニストレーターと呼ばれるプロです。競技団体であれば専務、強化部長職。球団であればゼネラルマネジャー(GM)や社長、大学であればアスレチックディレクターです。ビジネス面のみならずスポーツ医科学も熟知し、選手時代の実績に関係なく、職責を果たせるかが重要です」

 ――NECでスポーツチームの運営管理をしていた中でどんな問題に直面しましたか?

 「驚いたのは、女子バレーボールと女子バスケットボールの練習を初めて見た時です。指導者が選手にボールを投げつけ、殴っていました。選手たちは髪を引っ張られても、『許してください』と懇願する。スポーツ部門を預かった立場から、恐怖指導を改めない限り、真の育成強化にならないと判断し、米国でトレーナー資格を得た人たちと、外国人選手の通訳兼トレーナーとして契約しました。ウェートトレーニングなどを駆使するコンディショニングのケアは、マッサージで済ませていた当時の日本のやり方とは大違いでした。そのきめ細かなやり方で成果を出す様子を見せ、指導者たちの概念を変えました」

 ――パワハラ防止、暴力的な体質改善へ、どんな制度改革が必要ですか?

 「問題発生時にフェアに裁定し、違反者を迅速に処罰する中立なスポーツ司法機関が必要だと思います。現実的には、日本スポーツ仲裁機構の充実でしょう。現行では被申立人が応じなければ調停がなされませんが、これを査察ができるくらい権限を強めるべきです。近年はすぐ第三者委員会に判断を委ねますが、通常、調査対象に委員たちに報酬を払う人がいるので、公正中立な判断は下せません。第三者委員会は談合文化の新たな知恵といえます」

 ――ガバナンス(統治)、インテグリティー(高潔性)の必要性が叫ばれ、スポーツ庁が競技団体が守るべき基準を策定し、日本スポーツ協会などの統括団体が加盟団体の適合性審査を行うことになりました。

 「英語のきれいごとにならないよう、まずそれぞれの競技団体が役員の職責や違反行為があった時の処罰について細部を定め、各役員と契約をかわすべきです。競技はルールの下で勝敗が決まる。競技団体側にルール違反者がいたら、ペナルティーが科せられるのは当然です」(聞き手・編集委員 中小路徹

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 〈かわだ・ひろみち〉 日体大卒。米国の大学で体操を指導し、米国五輪代表を育成したほか、他競技のチーム運営に従事。1977年から西武鉄道でプロ野球の球団創設に尽力。94~97年は巨人の長嶋茂雄監督補佐として2度の優勝に貢献した。85~2005年はNECで実業団チームの運営・管理にも従事。その後、中大や東京国際大で客員教授を務め、現在はスポーツ界を見つめるブログなど執筆活動中。