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 兵庫県淡路市育波(いくは)の養護老人ホーム「北淡(ほくだん)荘」(入所定員168人)で、入所者と職員計74人がインフルエンザに集団感染し、うち71~99歳の入所者7人が21日までに死亡した。県が同日発表した。県は感染症法に基づく立ち入り調査を11日と17日の2度実施し、集団感染の経緯や死因などを調べている。

 施設は社会福祉法人「千鳥会」が運営。県によると、今月8日に職員1人がインフルエンザを発症し、21日までに入所者165人のうち62人と、職員28人のうち12人が発症した。

 死亡した7人はいずれも入所者で、9日に高熱が出た99歳女性が11日に脱水症状で死亡。14日に71歳と76歳の男性2人、16日に80歳男性、17日に98歳女性が、いずれも肺炎で死亡した。県は17日の立ち入り調査までに亡くなった5人の死因について「インフルエンザの直接、間接的な影響を否定できない」としている。

 さらに19日に81歳男性が誤嚥(ごえん)性肺炎で、21日に79歳女性が脱水症状で死亡。県は21日に新たに報告を受け、詳しい死因を調べている。

 北淡荘は、最初の死者が出た11日に県洲本健康福祉事務所に集団感染を報告。事務所は職員を派遣し、未発症の入所者にも抗インフルエンザ薬を予防投与するなど感染拡大の防止策を助言したという。事務所は施設側の対応について「おおむね必要な対策が講じられ、問題はなかった」とし、21日夕まで事案を公表していなかった。

 北淡荘によると、入所者は165人全員が個室で生活。昨年11~12月に全員が予防接種を受けた。集団感染の発生後は感染防止マニュアルに基づき、発症した入所者に個室から出ないよう求めるなど感染拡大の防止に努めた、としている。施設長は取材に「早めに健康福祉事務所に報告して助言を受け、打てる対策を打ったが、経験したことがない勢いで感染が広がり、くいとめられなかった」と話した。(吉田博行)

ワクチン「発病を完全に防ぐわけではない」

 国立感染症研究所によると、インフルエンザが重症化して肺炎を起こすなどして、国内では多い年には1万人以上が亡くなる。高齢者施設での集団感染について、大阪健康安全基盤研究所の小林和夫・公衆衛生部長は「利用者や職員、面会者に感染予防としてワクチン接種の呼びかけ、手洗いの徹底、外から施設内にウイルスを持ち込ませないことが重要だ」と話す。

 インフルエンザは唾液(だえき)のしぶきや、ドアノブなどを経由して感染が広がる。手洗いや手指のアルコール消毒のほか、マスクをするなどの「せきエチケット」も大切だ。職員だけでなく、面会者の健康状態にも注意を払う必要があるという。

 小林さんによると、現在最も流行しているウイルスは、2009年に大流行したタイプで、比較的ワクチンが良く効くという。

 ワクチンには重症化を防ぐ効果がある。しかし、発病防止に対するワクチンの有効率は60%とされ、完全に防げるわけではない。このため、ワクチンを接種済みの患者や職員であっても、発病が疑われる場合は早めに医療機関を受診することが大切という。小林さんは「高齢者は元々重症化しやすく、ワクチンの効果も弱くなっている可能性があることが、感染が広がった原因と考えられる」と分析する。(後藤一也)