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 南米大陸最高峰アコンカグア(標高6961メートル)の登頂とスキー滑降をめざしていたプロスキーヤー三浦雄一郎さん(86)が、同行する医師のドクターストップを受け入れ、下山した。俳優で歌手の加山雄三さん(81)は、三浦さんと家族ぐるみの付き合いがあるという。朝日新聞の電話取材に、思いを語った。

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 (登頂)断念の話を聞き、ご立派だと思った。いろんな人に期待を求められても、いざというときは安全第一。お医者さんの言うことを素直に従う謙虚な心も持っている。勇気ある撤退は、本当の冒険家だ。

 普通なら富士山(標高3776メートル)でも大変なのに、6千メートルまで行っただけでも大変なことだ。しかも86歳での挑戦は、勇気を与えてくれた。さらに、あきらめる勇気。すばらしい。

 三浦さんとは学生時代からの付き合いだ。私の母がスキーで全日本選手権に出たとき、三浦さんの奥さまも出場していた。2人とも「ともこ」という名前まで同じで、「お互い、ともこねえ」と話したのがきっかけになった。それ以来、家族ぐるみの付き合いをしている。札幌市のスキー場で一緒に滑ったこともある。私の長男はアメリカの大学に通ったが、ホームステイ先は三浦さんに紹介してもらった。

 三浦さんがエベレストに登ったとき、山頂から私の携帯電話にかけてくれた。エベレストの頂上で私の歌の「海 その愛」が頭に浮かび、口ずさんだという。理由をたずねると、雲海から顔をのぞかせる山々が島のように見えたと教えてくれた。私の歌を歌ってくれるなんて、とてつもなくうれしかった。山も海も同じ自然。三浦さんは山を愛し、私は海を愛している。一緒に晩ご飯を食べるときは「山海の珍味を食べよう」と笑っている。

 アコンカグアに向かう前、三浦さんに電話して「がんばって行ってきてください」と声をかけた。謙虚な心で勇気ある撤退をした本当の冒険家を拍手でお迎えしたい。(岡田匠)