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シリコンバレーを生きる

 シリコンバレーに「スティーブ」の名で通る日本人がいる。ホテルを長期滞在用に賃貸するサービスを始め、著名投資家から投資を受けるまでに成長させた。事業のヒントは、サンフランシスコの高い滞在費を浮かせるために始めた「下宿屋」だった。

あふれる思いだけ抱えて

 2014年1月1日。内藤聡さん(28)は、サンフランシスコに向かう機中にいた。3月の立教大学の卒業式まで待てず、バイトでためたお金と親から借りたお金を手に、年の始まりをサンフランシスコで迎えることにしたのだ。日本では楽天やサイバーエージェントから内定をもらっていた。でも、起業をあきらめきれなかった。

 きっかけは13年、大学4年生のときだった。半年間、休学してシリコンバレーの都市サンノゼに語学留学した。民泊のエアビーアンドビーや配車サービスのウーバーが台頭し始め、ツイッターの上場に沸いていた頃だった。

 帰国後、米国で書かれたサイトやブログを読み、シリコンバレーの最新情報をブログで発信しはじめた。

 「同世代のマーク・ザッカーバーグはすでにフェイスブックという巨大企業を作り上げている。自分も何かやってみたい」。それが何かはわからないまま、あふれる思いだけを抱えて、再びサンフランシスコ行きの飛行機に乗ったのだ。山梨県で木工機械の販売などをしている両親は、「ちゃんとやっていかれるなら」と送り出してくれた。

 しかし、やっていけるめどがあったわけでもなかった。サンフランシスコに暮らしてみると、すぐに大きな問題に気がついた。ホテルも家賃も高すぎて生活できない。そして、知り合いがいなければ、この町ではどうにもならない。

 日本から書いていたブログを読んでくれていた起業家の小林清剛さんが、相談に乗ってくれた。「家を借りて一部を貸し出し、その収入で自分の家賃をまかなったらどうか」

 そこで、同じ頃日本からやってきて、後にやはり起業家となった長谷川浩之さん(29)とサンフランシスコ市内に一軒家を探して回った。

 しかし、何の保証もない2人に家を貸してくれる人はなかなか現れなかった。ようやくメキシコ系の一家が、2カ月分の保証金と家賃を前払いする条件で、自宅の向かいの空き家を貸してくれた。契約に必要だった計100万円は、小林さんとシリコンバレーにいた日本の起業家が「日本の仲間がやっていくためなら」と出してくれた。

大家に菓子折り、見て見ぬふり

 長谷川さんと2人で2段ベッドを5台組み立て、10人が寝泊まりできるようにした。うち1台は、自分たちのベッドだ。名付けて「テックハウス」。名前はかっこいいが要するに、勝手に始めた「下宿屋」だった。

 テックハウスには別の狙いもあった。シリコンバレーを見たい、起業したいという若者が日本から集まる場になれば、知り合いを紹介し合ったり、情報交換したり、人のつながりが生まれると思ったのだ。

 日本語の予約サイトを作り、1泊30ドル(約3300円)で貸し出し始めた。

 口コミで次々と「宿泊客」がや…

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