[PR]

 東京・浅草で人力車を引いて肉体を鍛えてきた冒険家、阿部雅龍(まさたつ)さん(36)=東京都板橋区=が単独徒歩で南極点に到達し、23日、到達時の写真が国内の応援本部に届いた。阿部さんは「諦めなければ夢がかなうと強く感じた」とのメッセージも寄せた。

 阿部さんは同じ秋田出身で日本人初の南極探検家・白瀬矗(のぶ)中尉にあこがれて冒険を志した。秋田大学を卒業し、10年あまりにわたって浅草で人力車をひく仕事をしながら資金をためつつ、足腰を鍛えた。2017年には、全国各地を人力車をひいて回り、220日間で6400キロを走破した。寒さと雪や氷に慣れようと、北極圏のカナダやグリーンランドにも単独で挑んだ。グリーンランド沿岸では海氷が割れて冷たい海に落ち、はいあがって九死に一生を得たこともある。

 今回は資金協力も募って、南米チリから南極大陸に入り、昨年11月23日に海岸を出発。食料やテントを積んだ約100キロのそりを引っ張って、1人で南極点まで918キロを歩き通した。55日間かけて、今月17日(日本時間)に南極点に着いたという。世界初のエベレスト単独無酸素登頂を達成したイタリア人登山家ラインホルト・メスナーと、ドイツ人冒険家アルブド・フックスが1989~90年に初めて歩いたルートという。

 阿部さんは食料や燃料の補給を受けずに到達することを目指した。しかし、悪天候に阻まれ、想定より半月ほど時間がかかったため、ルート上にあった備蓄の食料を使い、無補給はかなわなかった。19日に南極点からチャーター機にピックアップされ、21日に南極大陸から南米チリに戻った。26日に帰国する予定で、「応援に支えられました。チャレンジする素晴らしさを多くの人に伝えたい」という。

 あこがれの白瀬中尉らは1912年1月28日、南緯80度5分まで達した。阿部さんは来年、これと同じルートをたどり、その先の南極点まで、今回より距離が長く厳しい道のりを単独無補給で歩きたいという。(中山由美