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それぞれの最終楽章・口から食べたい(1)

鶴見大学歯学部非常勤講師・飯田良平さん

 食べることは、生きる喜びの一つです。しかし、加齢や病気で口から食べられなくなる人は少なくありません。また入院を機に食事を禁じられる「禁食」となり、退院して自宅や施設に戻ってもそのまま最期を迎える方もいます。私は高齢者歯科を専門にする歯科医として、最期まで口から食べるための支援を続けています。このシリーズでは、そうした患者さんを紹介させていただきます。

 初回は、川崎市の佐藤多美子さん(享年88)のケースです。「骨髄異形成症候群」という造血に障害が出る病気でした。

 2018年4月18日。訪問診療中に車の携帯電話が鳴りました。同行していた歯科衛生士、齊藤理子さん(46)が勤める吉武歯科医院(同市)からでした。市内のサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)のケアマネジャーから、訪問依頼の電話があったというのです。「入居者の女性(多美子さん)が入院中、(のみ込みの際に間違って飲食物や細菌が気管に入ることで起こる)誤嚥(ごえん)性肺炎を起こして『禁食』になり、3カ月ほど点滴だけで栄養を取っていた。退院した今もそうだ。でも娘さんは『口から食べる』ことを強く希望している」

 歯科医院のスタッフが電話の様子から緊急性を感じ、移動中の訪問診療車に電話してきたのです。当医院での私の勤務は週1回です。「今日を逃すと1週間後になる」と思い、急きょ次の訪問先の前に寄ることにしました。ケアマネジャーに電話をして、許可をとりました。担当在宅医には、鼻からカメラを入れて、のみ込み機能を確認する「嚥下(えんげ)内視鏡検査」の許可をとりました。

 多美子さんが住むサ高住に着くと、次女の千加さんが話しました。「母は入院前は、普通の食事をとっていたんです。きっと口から食べられるはずです」。私と齊藤さんは、その熱い思いに応えようと思いました。

 入院していた病院の主治医からは、療養型病院への転院を勧められたそうです。でも千加さんは、お母さんが一生点滴でベッドに縛りつけられる生活ではなく、少しでも普通に食べる生活に戻してあげたいと強く思いました。たまたまチラシに載っていたサ高住に見学に行ったところ、その思いをわかってくれ、入居を決めた、とのことでした。

 1週間後再び訪問し、内視鏡検査でのみ込み機能を調べました。お茶やプリンで食べる能力を確認したところ、機能はおおむね良好でした。「これはいける」。とろみを付けた食べ物などで、徐々に食べる訓練を始めることにしました。

 ところがある日、貧血を起こし…

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