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 トヨタ自動車は6日、2019年3月期の業績予想を下方修正し、純利益の見通しを大幅に引き下げた。新車販売は堅調だが、株式市場の混乱が業績を圧迫した。この日の会見では、車を売るだけでなく、どうやって利用してもらうかを一体でとらえる移動サービス業への転換を改めて強調。そこで、キーワードとなるのは「MaaS(マース)」だ。

 19年3月期の純利益の見通しを、従来の2兆3千億円(前年比7・8%減)から1兆8700億円(25・0%減)に引き下げた。売上高の見通しは29兆5千億円(0・4%増)、営業利益は2兆4千億円(前年並み)で、ともに従来予想を据え置いた。ダイハツ工業・日野自動車を含むグループ世界販売台数の見通しは5万台多い1055万台(1・0%増)とした。

 トヨタは当初から19年3月期は2年ぶりの減益になると予想していた。それに加えて会計ルールの変更で、昨年末の株価下落で発生した保有株の評価損を決算に反映しなくてはならなくなり、減益幅が拡大したという。白柳正義執行役員は東京都内での会見で「将来的な競争力を左右するものではない」と強調した。

 同日発表した18年4~12月期決算(米国会計基準)は、売上高が前年同期比3・1%増の22兆4755億円、営業利益は9・5%増の1兆9379億円、純利益は29・3%減の1兆4233億円だった。

MaaS事業へ「仲間」づくり

 稼いだ利益を元手に、トヨタは新分野への巨額の投資も続ける。その一つが、MaaSと呼ばれる新たな事業領域だ。カーシェアやライドシェアといった車を所有せずに利用できるサービスが代表格だ。

 決算会見で友山茂樹副社長はMaaSについて「モビリティーカンパニーとして新たな成長をめざす領域」と力説。専用車両として、昨年発表した自動運転の大型電気自動車(EV)「eパレット」のほかに、中型ハイブリッド車や小型EVも開発することを明らかにした。

 今年に入って、トヨタはMaaS事業を次々と実行に移している。

 1月には、カーシェアサービス「トヨタシェア」の実証実験を都内の一部で始めた。コインパーキングやトヨタの販売店など17カ所で車の貸し借りができる。スマートフォンで車の予約やドアの解錠ができ、料金も15分150円(税込み)からという手軽さを売りに若者の利用を促す。今後、全国にも拡大する考えだ。

 今月1日には過疎地域や高齢者への配車を行うソフトバンクとの新会社が事業を開始。6日には月々約19万円(同)で高級車レクサスを半年ごとに乗り換えられるサービスも始めた。

 MaaS事業では、自動運転などの新技術も重要。安全性の高さや決済方法の手軽さなど、利用者にサービスを選んでもらうための競争力につながるからだ。

 「未来のモビリティー社会をつくる仲間の輪が広がることを強く期待する」。1月中旬、トヨタ本社(愛知県豊田市)でトヨタの調達担当者がデンソーやアイシン精機などグループ9社の技術者らに語りかけた。

 トヨタがイスラエル大使館などと共催で開いた技術展示会。IT関連技術で世界の注目を集めるイスラエルの新興企業10社を招き、自動運転用センサーや車をサイバー攻撃から守るシステムといった自動車向けの新技術を学んだ。

 トヨタの担当者は「イスラエルの革新的な技術を組み合わせ、新たなシナジーが生まれることを期待する」。足りない技術は、他社からとりいれる姿勢が鮮明だ。友山副社長も「あらゆる事業者とオープンに提携できる環境をつくらないといけない」。そのため、トヨタがMaaS向けに開発する車両は、他社の自動運転システムと「共存」できるようにする計画だ。

 豊田章男社長が、車をつくる会社から移動サービスを手がける会社への転換を宣言してから1年。戦略は成功するのか。

 MaaSに詳しいモータージャーナリストの森口将之さんは「カーシェアやライドシェアでは、1台の車をなるべく効率よく使うことが利益につながり、発想の転換が必要。一方で自動車会社は足元ではより多くの車を売る必要がある。これを同時並行でやりながら、いかにうまくシフトできるかが鍵になる」と指摘する。(初見翔、竹山栄太郎、細見るい)

     ◇

〈MaaS(マース)〉 「モビリティー・アズ・ア・サービス」の頭文字をとった、欧州発の新しい移動の概念。もとは、鉄道やタクシーといった複数の交通手段を、決済を一元化するなどして一つのサービスとして利用できるようにすることを指した。現在は明確な定義はなく、自動車やIT業界が新しい事業領域として取り上げて注目を集めている。ライドシェアやカーシェアがその代表格とされることも多い。

移動サービスをめぐるトヨタの動き

2018年1月 豊田章男社長が「人々の移動を助ける『モビリティーカンパニー』への変革」を宣言

     4月 カーシェア「タイムズカープラス」を手がけるパーク24との業務提携を発表

     6月 シンガポールの配車大手グラブへの出資を発表。年末には配車サービス車両の保守管理支援も発表

     8月 米配車大手ウーバー・テクノロジーズへの出資と、自動運転分野での協業を発表

     10月 ソフトバンクとの提携を発表。今年2月に過疎地などでの配車を手がける共同出資会社が事業開始

2019年1月 東京都中野区を中心にカーシェアを開始

     2月 月額定額で車に乗れるサービスを開始

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