「世界に言語が1つなら」 バベルの塔が建つ?今考える

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編集委員・大野博人
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日曜に想う

 バベルの塔は、今なら建設できるかもしれない――。情報通信研究機構(NICT)フェローの隅田英一郎さん(63)はそう考える。

 旧約聖書によると、人間は天に届く塔をつくろうとした。それを阻むため神は一つだった言語をバラバラにした。共同作業が無理になり建設は挫折した。

 隅田さんはコンピューターを使った自動翻訳研究の第一人者だ。「いっしょに働くためのコミュニケーションはできるようになります。神の怒りは買いたくないですけど」

 NICTが2010年に開発した音声翻訳アプリ「ボイストラ」はスマホなどに無料でダウンロードできる。文字や音声を即座に外国語にしてくれる。英語や中国語ばかりか、ベトナム語やミャンマー語など31の言語でふつうの会話なら可能だ。これを元にした各種ソフトは各方面でどんどん普及している。

 たとえば医療の現場。ほとんどの都道府県の救急車が搭載しているそうだ。日本で暮らす外国人が増え、救急搬送も急増中。症状を日本語で訴えるのはむずかしい。救急隊員にいくつもの外国語の知識を求めるわけにもいかない。そこで威力を発揮する。役所の窓口や交番など出番は増え続けている。

 日本は事実上、移民社会にかじを切った。「外国語はこれまでエリートの道具でした。でもそんなこといってられない状況です。ふつうの人も外国人と話さなければならない。しかも英語だけですまない。アジア言語の理解も必要です」

 絶妙のタイミングで自動翻訳は精度の向上を続けている。

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 バベルの塔建設の挫折が、人…

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