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 コンビニエンスストアや商店街で働く店員向けに、認知症の人が来店したときの対応をまとめた冊子「お店版 認知症ガイド」が、大きな反響を呼んでいる。認知症になっても安心して暮らせるようにと、横浜市西区が昨年12月に発行すると500部がすぐになくなり、8千部を追加で印刷したという。

 区内の店舗から、「認知症と思われる人が来店し、対応に苦慮することがある」と相談を受け、区高齢・障害支援課担当者のほか、認知症専門医やグループホーム、介護者グループなどと昨年1月から検討会を重ねて、作成した。

 認知症の人は一般に、自分の置かれた状況がわからなくなったり、以前はできていた作業手順がわからなくなったりする一方、自尊心や感情はある。ガイドでは、「店内に長時間いる」「レジでの精算作業に手間取る」など、「迷惑」と捉えてしまいがちな行動について、本人がどんな気持ちを抱いているかや、自尊心を傷つけたり、疎外感や不安を感じさせたりしないためにはどう対応すればよいかを例示している。

 区内のコンビニ約30店に実施したアンケートでは、「犯罪ではないが心配な場合、どこに連絡すればよいかわからない」という悩みも浮かび、区役所の担当課などの連絡先も記した。

 昨年末に発行すると、「入手したい」「参考にしたい」と市外からも問い合わせが相次ぎ、急きょ増刷した。今後、区内のコンビニや商店に配っていくという。

 同課でも入手できるほか、西区のサイト(http://www.city.yokohama.lg.jp/nishi/life/fukushi-hoken/kourei/ninchishouguide.html別ウインドウで開きます)からダウンロードもできる。

「温かい目で見守って」家族も期待

 検討会に参加した西区在宅介護者のつどい「あけぼの会」会長の竹下淳子さん(74)は、「認知症は誰でもなりうる病気。ガイドを通じ、温かい目で認知症の方を見守る雰囲気が広がれば」と期待する。

 竹下さんによると、「迷惑」、「早く施設に入れるべきだ」と言われるなど、認知症への偏見も根強く、隣近所に対して家族が発症を打ち明けるのをためらいがちだという。

 一方、竹下さんが見聞きした中には、認知症を知った店側が大きな力になったケースもある。商店街で万引きしたのをきっかけに認知症と診断された男性は、店側の配慮で店主の孫と遊んだり、夕方になったら自宅に帰りやすいよう声がけしてくれたりと助けられた。この男性は、早朝の外出も続き家族が心配していたが、実はその間、近所の商店のゴミ出しを手伝っていたことがわかり、男性が入院したあと、店主が家族を励ましてくれた。

 毎日買い物に来る、店に長時間いるということは、本人にとって、その店が落ち着ける場所だということ。どうか温かく見守ってほしい――。そんな家族からの思いも、「お店で働くあなたへのお願い」として、ガイドに載せた。

 「一人で買い物に行くことは自尊心を保つことにつながるし、優しく対応してもらえれば本人も穏やかに過ごせる。自分が発症したときも安心して過ごせる街になるように、お店の方々にぜひ学んでいただきたい」と話す。

 

<アピタル:ニュース・フォーカス・その他>

http://www.asahi.com/apital/medicalnews/focus/(木下こゆる)