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 若い世代に絶望するなかれ。今こそ太い知的伝統で、皆でつながっていこう――。2018年度朝日賞と第45回大佛(おさらぎ)次郎賞、第18回大佛次郎論壇賞、18年度朝日スポーツ賞の贈呈式が30日、東京都千代田区の帝国ホテルで開かれ、朝日賞に選ばれたローマ法研究者の木庭顕さんが力強い口調で呼びかけた。同じ朝日賞を受けた是枝裕和さんは、長年ともに歩いてきたスタッフや仲間たちへの感謝の思いを受賞のスピーチにこめた。

 (先の登壇した木庭顕さんが「私は前座」と言ったのを受けて)僕は真打ちではなくてですね、二つ目ということで先に進みたいと思うんですけど(笑)。

 あまりこういうところでしゃべる話を前もって考えないタイプで、何をしゃべろうかなと思いながら座っていたのですが、木庭先生の話があまりに素晴らしくてですね。僕に関する部分を除いて、メッセージというものを巡っての今のお話は本当に、自分がものを作っていく、そして人に伝えていく上でとても参考になる。刺激になるとても良いお話を伺って、それだけで僕は満足して帰れるなと思っています。

 これで降りちゃうと多分あまりに無責任なので、少しだけお話ししますと、テレビの仕事から僕はスタートしましたけれども、それが1987年なので、今年が33年目になると思います。今日この場所に僕がお声掛けをして来ていただいている方々の中には、その33年前の僕を知っているテレビの制作会社の先輩たちをはじめ、その後僕が映画を作る上で出会った、そして今まで支えてきてくれているスタッフの方たち、そして、今この数年、若い作り手たちを集めて「分福」という制作者集団を始めているんですけど、そこの仲間たちも来てくれていまして、それを考えるとすごく幸せな30年なんだなと改めて感慨深く思っております。

 この受賞の知らせを聞いた時に、まずしたのは、今まで映画監督でこの賞をもらっている人は誰なんだろうと。さかのぼって調べたんですけど、そうすると黒澤明の名前があり、新藤兼人の名前があって、山田洋次があり、宮崎駿があるという。大丈夫かな、と。

 そこに連なる、「そこまで大げさに考えなくても良いですよ」という風に言われましたけど、そこに自分の名前が連なるというのは責任がすごく重たくて。

 去年から今年にかけて幾つかの、海外の映画祭などでも名誉賞的なものを頂くことが増えてきておりまして、何かそろそろゴールが近いですねと言われている感じが、ちょっとイヤなんですよね。映画監督としては、50代ってまだこれから。たぶん、これからのキャリアの方が大事なのではないかと自分では考えているんですけど、何となくアガリだと周りが見ているのかなというのは、やや危機感を持って、半ばこの受賞を喜びながら、やや不安になっているというのが正直なところです。

 黒澤明にまでさかのぼるとですね、この朝日賞は、戦時中は戦記映画をつくっている会社に授与されています。賞というのは選ばれる選考委員の方々ももちろんですけど、やはり時代時代によって、非常に相対的に与えられるものだと思っていますので、それはカンヌのパルムドールも全く同じで、どの賞も絶対的なものではない。その時その時代の審査員の様々な状況から与えられる相対的なものだと思っているので、今回の自分の受賞が10年、20年経ったあと、振り返ってみた時にどう再評価をされるのかというのは僕の手には余る作業なので、その時代にして頂ければ良いなと思っています。

 ただ、そういう戦時中の受賞を含めてですね、僕が関わっている映画というものが時代の中でどのような役割を果たして、どういう風に翻弄(ほんろう)され、もしくは翻弄する側に回り、いま自分が映画を作れているのかということ、そういう歴史の光の部分も闇の部分も背負った上でいま作らせてもらっているということを忘れずに、今後も映画を作っていければと思っています。

 二つ目は、この辺で。真打ちの方にこの場所を譲りたいと思います。今日はありがとうございました。(山本悠理)

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