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 セミの羽には抗菌効果があるらしい。まねをすれば、新しい抗菌加工ができるかも……? そんな研究が進められています。市販の汗臭くならない服や雑菌が増えないプラスチック製品などには、抗菌剤(薬剤)が練り込まれたり、表面に塗られていたりします。でも、セミの羽は薬を使わずに「抗菌」するのだといいます。いったいどんな仕組みなのでしょうか。

クマゼミの羽を模してみると……

 研究しているのは、関西大学の伊藤健教授のチーム。伊藤さんたちは、クマゼミの羽の透明の部分の構造に着目している。

 セミの羽の透明の部分には、健康サンダルのように無数の微細な突起が、規則正しく並んでいる。この上に、緑膿(りょくのう)菌という細菌をたらすと死滅する、ということをオーストラリアのチームが発見していた。ただ、それが本当に「構造」によるものなのか、セミの羽に含まれる成分が関係しているのか、詳しいことは判然としていなかった。

 そこで、伊藤さんたちは、この構造と同じ形のナノレベルの微細構造(ナノ構造)を、シリコン基板を使って作ることに成功した。髪の毛の千分の1ほどの太さの突起を、基板の上に規則正しく樹立。この上に、大腸菌を含む液を垂らして培養し、菌数の変化を調べた。

 その結果、確かに、生きた菌の数が減っていくことが分かったという。突起の高さが高いほど効果も高く、最大で菌数を10万分の1まで減らすことができた。

 一般に、抗菌加工製品では、抗菌加工されていないものと比べて菌数を100分の1に減らすことができると「抗菌効果がある」と表示できる。伊藤さんは「抗菌というよりも、殺菌に近い効果が確認できた」と話す。

写真・図版 

 では、いったいどのように菌を殺しているのだろう? 伊藤さんたちは、大腸菌の体内に蛍光物質を組み込んで光の強さの変化を調べた。体液とともに蛍光物質が漏れ出せば、大腸菌が発する光は弱くなるはずだ。その結果、大腸菌がナノ構造にくっついたあと、数分後から一気に暗くなって、15分ほどでゼロになった。「大腸菌がナノ構造の上で動き回ろうとするうちに膜が傷ついて穴があき、体液が漏れ出して死んでいるのではないか」と伊藤さん。もしかすると、薬剤を使わない「抗菌加工」につながるかも知れないと期待する。

 もちろん、この成果がすぐに製品に結びつくわけではない。大腸菌以外の細菌についてはまだ調べておらず今後の課題だ。海外では、トンボの羽でも同様の効果があるという報告もあり、何が「抗菌力」の決め手になるのかもまだまだ研究途上だという。

薬剤の使いすぎ、「耐性菌」の懸念も?

 実は、「薬剤をできるだけ使わない抗菌加工」の必要性が、近年指摘されはじめている。過剰な抗菌加工が、環境中の微生物に悪影響を与える可能性が懸念されているのだ。

 微生物の制御に詳しい神奈川工…

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