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消費税

 スマホどころかガラケーさえ普及していなかった1989年4月1日未明、公衆電話に走った。流通担当として見届けた消費税導入の瞬間を、すぐ本社に伝えるためだ。その7年後、こんどは大蔵省(現財務省)詰めの記者として税率引き上げ問題を取材した。消費税が平成とともに始まって30年。当初3%だった税率は今秋、10%になる予定だ。

「損したみたいかな」

 1989年3月31日夜。バブル景気さなかの金曜とあって東京ではタクシーがつかまらず、酔っ払いが街にあふれていた。

 私は、日付が4月1日に変わる少し前から東京・上野のコンビニエンスストア「サンチェーン上野店」にいた。消費税導入の瞬間を取材するためだった。

 経済記者として、流通や食品などの業界を担当する東商クラブに属していた。消費税の導入が決まった後も小売りの現場では、価格表示は内税か外税か、消費税の1円未満の端数は切り捨てか切り上げかといった様々な議論が続き、ついに、この日を迎えた。

 東商クラブに属する新聞、テレビ各社の記者は、混乱を起こさぬよう同じ店での取材を申し合わせ、上野の店に集まった。

 時計の針が0時を指す。店員が「0時になりました。消費税をちょうだいします」と頭を下げた。

 税率は3%。最初の客は300円の炭酸飲料を買った高校生だった。500円玉での支払いに、おつりの191円と「消費税9円」と書かれたレシートが渡された。

 高校生の「ちょっと損したみたいかな」という話を聞き、公衆電話に走った。

 夜が明けて配る1日付の朝刊向けに、急いで取材内容を伝えるためだ。スマートフォンはおろか携帯電話もまだ普及していない。コンビニ店の前にあった1台はすでに他社の記者が使っていた。近くの児童公園の電話までまた走り、担当デスクに伝えた。

 大勢の記者が詰めかけるなかで、店員が頭を下げて受け取ったのが最初の消費税だった。

 それから30年。サンチェーンを訪ねると、店は「ローソンストア100台東上野3丁目店」に変わり、公園の電話はなくなっていた。5年前に撤去されたという。

 いくつもの政権が倒れた末、平成元年に導入された消費税は、この10月に、10%に引き上げられる予定だ。

百貨店で1円玉が復活

 平成に入って3日目、1989年1月10日付の朝刊に東京の百貨店・松屋の社長、山中●(金へんに貫。読みは「かん」)のインタビューが載った。「世界経済の中核的存在となった日本経済には、大きな変化はなく、景気は順調に推移すると考えています」

 消費税の導入を4月に控えつつも世はバブルの真っ盛りだった。

 そのころ、別の百貨店の広報担…

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