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 7日に引退会見を開いた2012年ロンドン五輪柔道女子金メダリストの松本薫さん(31)。20年東京五輪で「ママでも金」を目指していたが、「育児と競技の両立は難しかった」と明かした。女子選手が出産後も満足に競技を続けるためには、「多くの助けの手が必要だと思う」と訴える。

 松本さんは銅メダルを獲得した16年リオデジャネイロ五輪後に、大学時代から交際していた1学年上の料理人の男性と結婚。17年6月に第1子の女子を出産した。

 産後1カ月で稽古を再開したが、家事や育児をしながらの選手生活は過酷だった。朝は夫の出勤前にマウンテンバイクに乗って体力作り。娘を保育園に送り、家事をこなして、夕方から母校の帝京大で稽古していた。

 練習が中途半端になっても途中で切り上げ、遅くても夜7時半には保育園に迎えに行かねばならなかった。外の道場で練習する「出稽古」の行き先も、保育園の近くに限られた。

 畳の上での気迫あふれる表情から「野獣」と呼ばれた松本さん。出産前は他の選手よりも早く道場に来て体を動かし、人一倍の稽古量が強さの源だった。しかし、共働き夫婦2人の子育てで、独身時代と同じ時間を確保することは不可能だった。「私は練習量(の多さ)で『野獣』になっていくんですけど、その練習量をこなすことが難しかった」。娘の発熱などで急に練習ができなくなる日も少なくなかった。

 東京都北区のナショナルトレーニングセンター(NTC)には託児所がある。松本さんも、日本代表の合宿などがNTCで開かれる時には利用していた。しかし、日々の練習場所にそうした託児施設はなく、地方の試合や遠征もある柔道では、そのつど子どもの預け先が課題になった。

 一方で松本さんは、女子選手にとって出産は必ずしもマイナスばかりではない、と強調する。「以前は練習でうまくいかないことがあると、引きずってしまっていた。子育てをしていると、うまくできなくても娘のお迎えに行かなきゃいけない。オン、オフの気持ちの切り替えができるようになった」。それだけに、同じ女子選手たちには出産後も「ぜひ続けてほしい」と願う。

 「気兼ねなく子どもを預けられるようなサポートがもっとあれば、さらに女性アスリートがオリンピックを目指せるようになる。しっかり練習ができる環境があれば、本当に助かります」(波戸健一)