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 ワールドクラスのサッカー選手は走り方も超一流――。1992年バルセロナ五輪の陸上男子400メートルリレーで6位入賞した杉本龍勇(たつお)氏(48)が今季、Jリーグ1部ヴィッセル神戸のフィジカルトレーニングアドバイザーに就任した。オリンピアンがまず高く評価したのがMFアンドレス・イニエスタ(34)とFWダビド・ビジャ(37)の走り方だった。

 杉本氏は法大の教授でスポーツ研究センター長も務めているため、不定期で神戸の指導にあたる。10日にキャンプ地の沖縄県金武(きん)町で選手らと初顔合わせ。約30分間、足の運びなどを教えた。練習後にスペイン代表を2010年にワールドカップ初優勝に導いたイニエスタとビジャの2人の名前を挙げて「うまいですよね」と語った。

 歩いたり走ったりする時、杉本氏が重要視するのが接地して体を支える軸足。特にひざの使い方だ。「ひざは足を動かすためでなく、曲がりを止めるための関節。伸ばして使ったほうがいい」が持論だ。そうすれば姿勢が安定する。力をひざに吸収されることなく、効率良く地面に伝えられる。無駄な力を使わないのでケガの心配も減る。

 「2人の動きは力感がないように見えるが、重心が安定していて、スムーズに体を動かせている」と断言する。「パフォーマンスを上げようとした結果、あの動きを身につけたのでしょうね。スキルの高さは、それができているからこそ成立する」と続けた。

 根本的な考えとして、杉本氏は走る量を増やして体を追い詰めるやり方を否定する。「燃費を良くするためのトレーニングをする。がむしゃらにやるのでなく、持っている『タンク』の中からどう使うかを考える。そのほうが楽だし、大事な場面でしっかり力を出せる」と語る。

 かつてJ1清水エスパルスでフィジカルコーチを務めたときに、兵庫・滝川二高から加入したばかりのFW岡崎慎司(32=現レスター)を指導した。スピードが弱点だった岡崎だが、足の動かし方を矯正して短い距離のダッシュ力を向上させることに成功。その後、日本代表の点取り屋に成長した。だからこそ言葉に説得力がある。

 また分かりやすい表現法も特徴で若手は大いに勉強になったようだ。20歳のMF安井拓也は走る時、軸足と反対の足を大きく上げるように指導された。「足を大きく上げれば、あとは勝手に地面に下りてくると言われた」。軸足のひざも自然と伸びてスムーズに体が動くようになる。「走りに対する考え方が変わった」と目を丸くしていた。(有田憲一)