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 妊娠中に風疹になり、娘が難聴を抱えることになった母親が、予防接種の大切さを広めようと演劇の公演を企画した。先天性風疹症候群の高校生が甲子園を目指す「遥(はる)かなる甲子園」が24日、東京・渋谷で上演される。「大切な人を悲しませないため、風疹について知ってほしい」と訴える。

 母親は大阪府の大畑茂子さん(52)。1997年8月、三女の花菜子さん(21)を妊娠して14週を迎えた頃に風疹にかかった。長女が幼稚園で風疹に感染していた。40度を超える高熱がでて10日ほど入院した。

 退院の直前、妊娠初期に風疹にかかると赤ちゃんが目や耳、心臓に障害が出る先天性風疹症候群になる可能性が高くなることを初めて知った。医師から「中絶するか?」と聞かれ、「すぐに決断できない」と、退院した。

 その後も悩み続けたが、ある日、台所で作業をしていると、赤ちゃんがおなかを蹴った。「この子は精いっぱい生きている。産みたい」。夫の「どんな子でも自分たちの子」との後押しもあり、5カ月後に出産した。

 花菜子さんは右耳が聞こえづらい。周囲には難聴の原因を黙っていたが、2013年の風疹の大流行のとき、同じ病気の子どもを産んだばかりの母親らと出会った。「自分が経験したつらさを、次の世代に引き継がせてはいけない」とこの年、一緒に患者会「風疹をなくそうの会」を設立。体験を講演会で語るなど、情報発信をしてきた。

 風疹が再び流行した昨年、大畑さんは知人から大阪市の劇団「関西芸術座」が公演していた「遥かなる甲子園」の存在を聞いた。作家の故・戸部良也さんの原作で漫画や映画化もされている。東京五輪が開催された1964年、沖縄で猛威をふるった風疹の影響で同症候群の子どもが400人以上生まれたとされ、その子どもたちが通うろう学校の生徒が甲子園を目指した実話がもとになっている。

 「防げる聴力障害があると多くの人に伝えたい」と大畑さんが劇団に連絡すると快諾してくれた。インターネットで資金を募る「クラウドファンディング」で420万円を集め、大阪(1月に公演済み)と東京の公演にこぎ着けた。

 舞台では、自身が風疹に感染した影響で、息子の耳が聞こえなくなったことに苦しむ母親の姿も描かれる。大畑さんは「東京オリンピックが来年に迫った今も、国内では流行が繰り返されている。風疹はワクチン接種で防げることを知ってほしい」と話す。

 24日午後1時半、東京都渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターカルチャー棟大ホールで。事前申込制(先着順)で無料。申し込みは専用フォーム(https://pro.form-mailer.jp/fms/c8533040157291別ウインドウで開きます)へ。(黒田壮吉

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 <風疹> ウイルス性の感染症で、くしゃみやせきなどのしぶきでうつる。発熱などの症状を和らげる対症療法以外に治療法はない。予防にはワクチンが有効だが、妊娠中は受けられず、妊娠の2カ月前までに受ける必要がある。2018年に報告された風疹の患者数は2917人。93人だった前年の30倍以上に増えた。今年1月下旬には、先天性風疹症候群の赤ちゃんが5年ぶりに埼玉県で確認された。前回流行時の12~14年に同症候群の赤ちゃんが45人生まれ、うち11人が亡くなった。患者の多くを占める39~56歳の男性は、今春から無料でワクチンを受けられるようになる。

 

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