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 「ぐりとぐら」「おおきなかぶ」「三びきのやぎのがらがらどん」――。世代を超えて愛される数々の絵本を世に送り出した、元編集者で福音館書店相談役の松居直(ただし)さん(92)が、「絵本は心のへその緒」(NPOブックスタート)を刊行しました。戦後の絵本づくりの土台を築いた「編集職人」はいま、「子どもの話を本当に聞けていますか」と問いかけます。(中村靖三郎)

 『気持ちを込めて語られた言葉は、人間のものすごく深いところに伝わり、残り、ときを経て出てくる』

拡大する写真・図版福音館書店相談役の松居直さん=2018年12月10日、東京都杉並区、山本裕之撮影

 松居さんの本の一節だ。なぜ、一度も教えてもらったことのない子守歌を歌えるのか。絵本づくりを始めたころから気になっていた疑問に、見いだした答えがこれだった。

 本は、2002~18年に松居さんが国内外で行った講演会や発言をまとめたものだ。特に、乳児と絵本との関係を語った部分を選んでおり、こんな一節もある。

 『口でお乳を飲むように、耳に入ってくる言葉を食べ、気持ちも一緒に感じ取る』

拡大する写真・図版「絵本は心のへその緒」(NPOブックスタート)

 乳児に絵本を語りかけることは、子守歌と同じ「言葉の体験」になるという。東京都内の自宅で、松居さんに改めて「赤ちゃんに絵本がわかるのか」と尋ねると、こう返ってきた。

 「それは心の問題なんです。子どもは耳から(言葉が)入ってくるのと同時に、言葉の意味ではなくて、気持ちが通じる。だから、大人が子どもにどういう気持ちで語っているのか、『本当に語りたい』という気持ちをどれほど持っているかが、最終的には問われることになります」

 松居さんは同書で、『絵本は子どもに読ませる本ではなく、大人が子どもに読んであげる本だ』と訴える。自身の3人の子どもにも、10歳ぐらいまで本を読んで聞かせた。絵本の最も大切な役割は『共に居ること』だと考えるからだ。一緒に読むことで、同じ時間と空間の中で言葉の喜びを共有する。『作者の名前は覚えていなくても、誰に読んでもらったかは覚えている。読んだときの喜びや楽しみが大きいほど、子どものなかに生涯残り続ける』と語られている。

 ただ、現代は『言葉の消える時代』とし、『人間の口から出る声をじかに聞く体験が、どんどん貧しくなっている』と警鐘を鳴らす。

 「気持ちが通じるためには、日常生活を、どう子どもと一緒にやっているのかを考える必要がある。子どもとの会話を通して、お父さんやお母さんが子どもの気持ちをどのくらいキャッチできているか。子どもの話が本当に聞けているかどうかが、今、問われていると思います」

 ただ、やさしくこうも続…

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