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 腰痛は体の不調に関して最も多い自覚症状の一つです。2016年の国民生活基礎調査によると、病気やけがなどで自覚症状のある人の人口千人当たりの数(=有訴者率)を症状別に見た場合、腰痛は男性で第1位、女性では肩こりに次いで第2位でした。同じ調査で、病気やけがで通院している人の人口千人当たりの数(=通院者率)を傷病別に見ると、腰痛症は男性で第5位、女性で第4位でした。

 このように腰痛は日本人にとってごくありふれた症状の一つですが、その原因はさまざまで、中には重い病気が隠れていることがあります。

 重い脊椎(せきつい)疾患の可能性を疑うべき危険信号としては、安静時にも持続する腰痛、もともとの病気によって栄養状態が悪い人、体重減少、発熱などがあります。こうした症状を伴っている場合、腫瘍(しゅよう)や骨折、感染症を考慮しなければいけません。

 発熱を伴う腰痛では、化膿(かのう)性脊椎炎を考える必要があります。脊椎は、背骨と呼ばれる椎体と椎体同士をつなぐ椎間板(ついかんばん)から構成されています。体を支える機能と、神経の通り道となる脊柱(せきちゅう)管によって神経を保護する機能があります。化膿性脊椎炎は椎体や椎間板に細菌感染が起こるものです。肺炎や尿路感染からその細菌が血流にのって脊椎に感染すると考えられています。悪化すると神経の通り道である脊柱管内にうみがたまり、背骨が壊れて神経の圧迫やまひを生じる可能性があり、重症と言える状態です。

 主な症状は背中から腰にかけての痛みで、時に発熱もあります。患部をたたくと非常に強い痛みを感じます。痛みのために足をまっすぐに伸ばして眠ることができず、ひざを曲げて眠らざるをえないのがこの病気の特徴です。

 化膿性脊椎炎は発症によって、急性型、亜急性型、潜行型の三つに分類されます。急性型は高熱と激しい腰背部痛があります。亜急性型では37度台の微熱のみで、痛みはありません。潜行型は発熱が無く、腰背部痛などの局所症状のみがみられます。

 化膿性脊椎炎は診断が難しい病気です。久留米大学整形外科で報告された化膿性脊椎炎の診断に至る経過の検討では、化膿性脊椎炎59例のうち24例は患者が初めて受診した診療科は内科でした。内科医がふだん診療するへんとう炎、気管支炎などによる発熱とは症状が異なるため、「原因不明の発熱」と判断されることもあります。

 逆に早期に診断できた症例は、早期にMRI検査を行った例や腰痛などの典型的症状があった例などに限られています。

 化膿性脊椎炎が疑われた場合、さまざまな検査が必要になります。血液検査で白血球数やCRPなどの炎症反応を調べます。そのほか単純X線検査やCTスキャン、MRI検査などの画像検査によって脊椎の破壊の状態や脊柱管にうみがないか調べます。化膿した病巣から組織を採取して細菌の種類を調べる生検を行うこともあります。

 化膿性脊椎炎の治療は、コルセットの装着などで安静にすることと抗菌薬の投与です。発熱が治まったからと言って安静を守らないと脊椎破壊が進行することがあり要注意です。

 神経障害が起こった場合は手術治療が必要になることがあります。手術治療では感染した病巣を取り除いて患部を洗浄し、細菌を除去します。また、骨の破壊が進行している場合は、骨破壊が進行しないように、脊椎にスクリューを刺して固定する脊椎固定術や、骨移植を行います。

 糖尿病やがんを患う人や超高齢者の増加で、細菌に感染しやすい要因を抱えた人口が増えていることから、化膿性脊椎炎の患者数は増加傾向にあります。重篤な疾患が隠れていることもあるので、長引く腰痛や発熱を伴う腰痛の場合は整形外科専門医の診察を受けることをお勧めします。

<アピタル:弘前大学企画・今こそ知りたい! 感染症の予防と治療>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/hirosaki/(弘前大学大学院医学研究科整形外科学講座助教 工藤整)