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 平成時代に刊行された本の中からベスト30を選出しようと、朝日新聞では、識者の方々にアンケートを実施しました。120人から回答を得て、1位は村上春樹さんの『1Q84』に決まりました。10位には『ねじまき鳥クロニクル』も。作者である村上さんに、平成とはどんな時代だったのか、作家としての歩みや作品について語っていただきました。

 ――平成という時代を象徴する作品として『1Q84』と『ねじまき鳥クロニクル』が、多くの識者の支持を得ました。

 「平成が始まってまもなく、1991年1月にプリンストン大学の客員研究員として招聘(しょうへい)され、渡米しました。ちょうど湾岸戦争が始まって米国は重い雰囲気の中で、『ねじまき鳥クロニクル』を書き始めました。仕切り直しという気持ちが強かったですね」

 「昭和の末に『ノルウェイの森』(87年)が思いもよらずベストセラーになって、ストレスフルだった。日本を離れ日本人にも会わず、こもりっきりで、集中して書けた。『ねじまき鳥』は僕にとっても象徴的で意欲的な小説。一番大事なのは『壁抜け』です。主人公が井戸の底でひとりずっと考えていて、別の世界に通じる。深層意識の中に入って行き、出入り口を見つける。『ねじまき鳥』で初めて出てきた『壁抜け』は、小説的な想像力を解き放ち、物語の起爆装置になりました」

 ――暴力や根源的な悪を描くという姿勢が表れた作品です。

 「昔、村上さんの小説には悪というものが出てきませんね、と言われたことがあって、ずいぶん考えましたね。純粋概念的な悪を出したいと。ドストエフスキーもバルザックもディケンズも悪を描くのがうまい。あこがれていました。僕自身には悪の感覚が欠落していたけれど、頑張って想像力を働かせて、自分の中にある悪も見えてくる感覚があった。そういう意味でも、大切な作品です」

 ――その後、95年に阪神大震災と地下鉄サリン事件が起こります。

 「95年は、僕の転換点といえ…

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