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【アピタル+】患者を生きる・食べる「大腸がん」

 大腸がんの切除後は、まだ働きの悪い腸をいたわり、手術の傷を早く回復させるために、どんな食事をするかが重要です。おなかのはりや下痢、便秘にも注意が欠かせません。メニュー選びや食事方法の工夫について、患者の食生活サポートに取り組むがん研究会有明病院(東京都江東区)の管理栄養士、中屋恵梨香さんに聞きました。

 ――大腸がんを手術した患者は「何を食べてよいか?」と不安ですね。

 基本的には「何を食べても大丈夫」と話しています。食べてはいけない、というものはありません。手術の傷を治し、体力を回復させるためにも栄養が必要です。食べ方に工夫をしながら食事をしましょう。

 大切なのは、よくかんで、ゆっくり少しずつ食べること。一度にたくさん食べると、働きの悪い腸に負担がかかります。

 ――この「何を食べても大丈夫」という基本の上に、いくつかの注意点があるのですね。

 大腸がん手術後、気をつけたいのは腸閉塞(へいそく)の予防です。腸閉塞とは、腸の動きがまだ悪かったり腸管が狭くなったりして食べ物や便が詰まってしまう状態です。吐き気や腹痛を伴います。

 腸閉塞を防ぐには、食物繊維を控えめにしましょう。ごぼうやタケノコなどの根菜類、しいたけなどのキノコ類、野菜や果物の皮などに、食物繊維は多く含まれます。食物繊維は消化・吸収されずに腸まで届くため、まだ働きの悪い腸に負担がかかります。

 ――では逆に、積極的に取りたいメニューは何でしょうか。

 たんぱく質はしっかり取りましょう。術後はたんぱく質とエネルギー源が欠かせません。肉、魚、卵、大豆製品に多く含まれます。ただしエネルギー不足ではたんぱく質がエネルギー源として使われてしまうので、バランスよく食事をすることが大切です。

■手術後1カ月の食事メニュー例
(がん研有明病院編「大腸がんに向き合う食事」から)
◇1日3食=1千キロカロリー
【主菜】1食にどれか一つか二つ
魚(一切れ) 肉(50グラム) 卵(1個) 豆腐(1/2丁)
【主食】1食にどれか一つ
ごはん(100グラム) おかゆ(200グラム) 食パン(1枚) めん(1/2玉)
【副菜】1食につき
野菜(150グラム=手のひらに半分)
◇間食を1日に2~3回=200~500キロカロリー
桃の缶詰(一切れ) サンドイッチ(一切れ) ロールパン(1個) バナナ(1本) ヨーグルト(1個) チーズ(一切れ) おにぎり(1個) 牛乳(1杯)など

写真・図版

 1回に食べる量が多いと腸に負担がかかります。3食は少なめとし、2~3回の間食を追加し、食事を1日に5回~6回に分ける工夫をしましょう。間食は甘いおやつでもよいですし、サンドイッチやおにぎり、ヨーグルトなどでもよいです。

 ――「野菜は控えめに、お肉は積極的に」というと、健康的な食事法とは反対の印象ですね。

 「逆ではありませんか」と驚かれる患者もいます。「野菜を多く」「肉よりも魚を」が、一般には健康によい食事だと理解されていますから。そこで私たちも「いまは腸閉塞の予防が大事なのです」と説明し、患者さんが誤解されないように注意しています。

 ――野菜を控えると「便秘になるのでは」などと心配されそうですが。

 そこで私たちは、ヨーグルトなどの乳酸菌を積極的に取るようにすすめています。適度な脂質も便をやわらかくしてくれるはたらきがあるため、適量とるようにします。また薬の助けを借りるのも有効でしょう。医師や薬剤師にも相談してください。

■治療前の食事と生活改善
(がん研有明病院編「大腸がんに向き合う食事」から)
①血糖値をコントロール
 血糖値が高いと、手術後の縫合不全や感染症のリスクが高まる。
②肥満を改善
 太っていると手術時間が長引き、合併症のリスクにもなる。
③できるだけ禁煙
 たばこは発がん物質。肺炎などの手術合併症のリスクも高まる。
④手術に備えて体力維持
 軽い運動などで体力を保つ。手術後の合併症予防にも効果。

 ――冷たいものや熱いものは、どうでしょうか。

 たとえばアイスクリームを大量におなかに入れると、冷たいまま腸に届いてしまい下痢がひどくなることがあります。もちろん食べてよいし、栄養にもなりますが、口の中で少しずつ溶かしながらゆっくり食べるようにしましょう。また、下痢をしているときに冷たいジュースなどを急にたくさん飲まないよう気をつけましょう。

 ――麺類も、もちろん食べてよいですね。

 はい。ただ、ラーメンやそば、うどん等はつるつると食べやすく、ついかまずに飲み込みがちです。「食欲がないので、食べやすい麺類がよい」とおっしゃる患者さんもいますが、よくかんで、ゆっくり食べるように意識してください。

 ――がん研有明病院では、患者さんの食生活サポートに積極的です。

 大腸の手術をされた方には、退院までの間に栄養指導をしています。詳しく食事や栄養のことを聞きたいとおっしゃる方には個別に面談の時間をとり、退院後の食事について少しでも不安を取り除けるよう、話させていただいています。

 がん研有明病院では、術前術後の疑問に答える一冊「がん研有明病院の大腸がん治療に向き合う食事」(女子栄養大学出版部)を出版しています。参考にしてください。

 

 ◇ご意見・体験は、氏名と連絡先を明記のうえ、iryo-k@asahi.comメールするへお寄せください。

<アピタル:患者を生きる・食べる>

http://www.asahi.com/apital/special/ikiru/(聞き手・伊藤隆太郎)