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【まとめて読む】患者を生きる・食べる「大腸がん」

 料理研究家の自分が、大好きな料理を食べられないなんて……。横浜市で料理教室を営む重野佐和子さん(57)は、39歳のときに大腸がんを手術して以来、腸閉塞(へいそく)に苦しみ、濃厚なスイーツなどをすべて絶つ生活を強いられます。「新しい道」を歩むきっかけは、味見で口にした一片のケーキでした。

トイレで下血「きっと痔だ…」言い聞かせた

 子どもの頃から「おいしいもの」が大好きだった。横浜市で生まれ育った重野佐和子(しげのさわこ)さん(57)は、グルメだった祖父と食べ歩きを楽しむうちに、いつしか「料理が天職」と感じていた。

 短大の栄養科を卒業後、著名な料理研究家の助手を経て、27歳でフランスに留学。料理学校「ル・コルドン・ブルー」で学び、パリなどのレストランで修業した。帰国後、29歳の時、地元でスイーツとフレンチの料理教室を開いた。

 だが39歳になる直前の2000年秋、寝ても疲労感が抜けなくなった。原因は分からず、戸惑っていたところ、トイレで突然、下血した。真っ赤に染まる便器を見て、気が動転した。

 もともと胃腸が弱く、数年前からは何度も腹痛が起きていたが、内科のかかりつけ医は「過労でしょう。しっかり休めば大丈夫」と言った。いぶかったものの、怖くて下血のことは相談できず、「きっと痔(じ)だ」と自らに言い聞かせた。薬局で買った薬を塗って様子を見ることにした。

 だが症状は改善せず、不安が募った。2カ月ほどたち、肛門(こうもん)科のある病院に行こうと、ようやく心を決めた。受診すると、最初は痔を疑われたが、3回目の受診で女性医師が提案した。「内視鏡で検査しましょう」

 日を改め、病院のベッドに横たわった。肛門からカメラを入れられると、すぐに医師が手を止め、慌てだした。「ポリープがあります。でも、うちではここまで。すぐに専門病院へ行ってください」

 ポリープは粘膜に突き出してできる病変で、がんの可能性もある。内視鏡のモニター画面は真っ赤な何かを映し出していた。「これって、何。私は終わりなの?」。驚きと不安で、気を失いそうだった。

 精密検査を受けられる大学病院を紹介された。ただ、自分で色々調べたうえで病院を選ぼうと思った。別のがん専門医からセカンドオピニオンを得て、国立がん研究センターへの紹介状を書いてもらった。00年12月、東京・築地の同センター中央病院を訪ねた。大腸外科医長だった赤須孝之(あかすたかゆき)さん(62)の診察を受け、1カ月がかりの検査が始まった。

 

大腸にポリープ、診断はがん「開腹手術になります」

 横浜市の料理研究家、重野佐和子さん(57)が体調を崩し、東京・築地の国立がん研究センター中央病院で詳しい検査を受け始めたのは2000年12月だった。血液検査やCT、大腸造影検査など、1カ月かけてさまざまな検査をした。ポリープが見つかった大腸だけでなく、肺や肝臓なども調べた。「転移がないかのチェックだったのでしょう」と重野さん。

 翌1月、大腸外科医長だった赤須孝之さん(62)から「明らかにがんです。開腹手術になります」と説明された。覚悟していたが、「やっぱり」と思った。ほかの臓器には転移が見られないことが、重野さんには唯一の救いと感じられた。

 手術日は1月16日と決まった。「がんは直径3・5センチで、位置は肛門(こうもん)から15センチくらい。S状結腸と直腸の境にある直腸S状部にあった」と赤須さんは振り返る。進行がんで、粘膜やその下の筋肉層より深くの「漿膜(しょうまく)下層」という部分まで達し、リンパ節転移もあった。内視鏡では切除できず、開腹手術となった。がんの前後を計15センチ切除した。

 「食べ物が悪かったのでしょう…

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